骨の成長に欠かせないと言われているカルシウム。育ち盛りの子どもたちにとって重要な栄養素です。
しかし、カルシウムは摂り過ぎも摂取不足も良くありません。
「カルシウムの適切な摂取量は?」
「不足すると、どのような影響が出るの?」
育ち盛りのお子さんがいるご家庭では、カルシウムを摂取する適量が気になるところでしょう。
そこで本記事では、子どもの成長に大きく関わるカルシウムの基礎知識や摂取のポイントについて解説します。
日々の食事で実践できるアイデアもご紹介しているので参考にしてください。
子どもにはなぜカルシウムが必要?知らないと損する基礎知識
カルシウムの適量を知るには、基礎的な知識が必要です。そこで次の5つのポイントをご紹介します。
- カルシウムは骨や歯以外にも筋肉や心臓のはたらきにも関与
- カルシウムが不足した場合の悪影響
- 摂取過剰は腎機能不全・血管石灰化などのリスク
- 1〜2歳児のカルシウム摂取推奨量は1日に400gm
- 牛乳の摂取量や吸収率について
順に見ていきましょう。
カルシウムの99%は骨や歯に!筋肉や心臓のはたらきにも関与する
カルシウムは、骨や歯の形成に必須のミネラルです。体重の1~2%を占め、ミネラルの中では体内に最も多く存在します。
そのうち99%は、リン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として骨や歯に存在し、残り1%は血液・筋肉・神経に関与しているのが特徴です。
カルシウムは、腸管から吸収されたのち骨として形成されますが、貯蔵と機能のふたつの役割を担っています。
一度骨に貯蔵されたカルシウムは、血中のカルシウム濃度が一定になるよう吸収と放出を繰り返しつつバランスを取っているのです。
残り1%のカルシウムの役割は次のとおりです。
- イライラやストレスなどを鎮める
- 神経を安定させる
- 筋肉の収縮に関わる
- 体内のイオンバランスを正常値に維持する
- 体内の浸透圧を一定に保つ
- 血液凝固を促進させる
- 心筋の機能を正常に保つ
- 抗アレルギー作用
カルシウムが筋肉や心臓の機能にも関わっているとは驚きですよね。
残りの1%は血中濃度を保つはたらき
カルシウムは、99%が骨や歯の主要な構成成分ですが、残りの1%は細胞の分裂・分化、筋肉収縮、神経興奮の抑制、血液凝固作用の促進などに関与しています。
おもに血液中に存在し、その濃度は一定に保たれています。骨に貯蔵されたカルシウムが、血中のカルシウム濃度を保つために、吸収や放出を繰り返しつつバランスをとっているのです。
さらに興奮や緊張、イライラを和らげる作用も
カルシウムは、脳の神経細胞の働きにも深く関わっています。筋肉の興奮を抑え、緊張を和らげたりイライラを解消したりする役割です。
脳神経細胞内に十分なカルシウムがあれば、少しのストレスでは動揺しません。
しかしカルシウムが不足すると刺激に敏感になったり、感情の起伏が激しくなったりします。
このようにカルシウムは情緒の安定にも一役買っています。
もしカルシウムが不足すると悪影響があるかも…
血中のカルシウムの不足が続くと、骨から放出されるカルシウムが多くなり、体内のカルシウムバランスが崩れてしまいます。
カルシウムが不足すると次のようなマイナスの影響があります。
- 発育障害
- 骨が弱くなる
- 疲労感
- 脱毛症
- 皮膚の乾燥
- 湿疹
- 脱毛症
- 身体のしびれ
- 筋肉や全身の痙攣
- 記憶障害
カルシウムは、成長ホルモンに作用し身長を伸ばしたり、骨量を高めたりするなど、丈夫な骨づくりには欠かせません。
カルシウム不足が進むと、神経や筋肉の興奮が高まり、テタニー(筋肉の痙攣)やてんかん(全身の痙攣)など深刻な症状にもつながるので注意が必要です。
成長期の子どもにとって、カルシウム不足は大問題ですね。
参照:健達ネット|カルシウムが不足するとどうなるの?不足症状や必要摂取量を紹介
カルシウム摂取の少ない女性は腰椎骨折をおこしやすいという研究あり
女性の骨量は、女性ホルモン・エストロゲンが急激に低下する閉経前後の50歳ごろから急激に減少します。
エストロゲンは古い骨を吸収する破骨細胞と新しい骨を作る骨芽細胞の両方に作用しているので、ホルモン分泌の低下が骨量減少に直結すると考えられています。
さらに、がん対策研究所の研究によれば、カルシウム摂取量の少ない女性グループは、腰椎骨折の発生リスクが摂取量の多いグループの2.1倍でした。
あくまで成人女性を対象にした研究ですが、成長期の子どもも同様に慢性的なカルシウム不足がなんらかの悪影響を招くかもしれません。
反対に摂りすぎが続くと腎機能不全、血管の石灰化などのリスクがある
カルシウムが不足するさまざまなリスクについて解説しましたが、反対に摂り過ぎた場合もリスクが生じます。
カルシウムの血中濃度が過度に上昇し、高カルシウム血症になると次のような症状が出る可能性も。
- 便秘
- 腎機能不全
- 腎臓結石
- 泌尿器系結石
- 血管の石灰化
- 高カルシウム尿症
- 前立腺がん
- 鉄や亜鉛の吸収障害
通常の食事からの摂取では、カルシウムの耐容上限量を超えることはないと考えられています。
しかしカルシウム強化食品やサプリメントを利用する場合は例外です。
とくにサプリメントの過剰摂取には気をつけたい
血中のカルシウム濃度が過度になる原因のひとつに原発性副甲状腺機能亢進症があります。これは副甲状腺にできたがんなどが原因です。
それ以外の原因としては、サプリメントの過剰摂取も挙げられます。
もともと食事で摂ったカルシウムの場合、必要な量だけ吸収され、残りは体外に排泄されます。
しかし、サプリメントでカルシウムを過剰に摂取した場合は、そのバランスが崩れるケースが多いようです。
アメリカでの12年間にわたる追跡調査では「1日1000㎎以上のカルシウムサプリメントを摂取していた男性は、心臓血管系の死亡率が2割高い」と報告されました。
またスウェーデンの女性6万人を19年間追跡した調査では「1日1400㎎以上摂取した人は死亡リスクが5割高い」と報告されています。
参照:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』|カルシウム
1〜2歳児のカルシウム摂取推奨量は1日に400mg
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、1‐2歳児のカルシウム推奨量は1日に約400㎎です。
子どもが必要とするカルシウムの量を年齢ごとにまとめると次のとおりです。
年齢 | 男(必要量/推奨量) | 女(必要量/推奨量) |
1-2 | (357/428) | (346/415) |
3-5 | (489/587) | (444/532) |
6-7 | (487/585) | (448/538) |
8-9 | (538/645) | (625/750) |
10-11 | (590/708) | (610/732) |
12-14 | (826/991) | (677/812) |
15-17 | (670/804) | (561/673) |
ちなみにカルシウムは牛乳200ml中に220mg、プレーンヨーグルト100g中には120mg、プロセスチーズ1個分25gには158mg含まれています。
日常的に牛乳や乳製品を摂取していれば、1日の摂取推奨量に近づくはずです。
日本人はカルシウム不足!?ほとんどの年代で基準値を下回っている
厚生労働省の『令和元年 国民健康・栄養調査結果』によると、カルシウムの世代別1日あたりの栄養素等摂取量は、ほとんどの世代で基準値を下回っています。
年齢 | 1日あたりの平均摂取量(mg) |
1-6 | 416 |
7-14 | 639 |
15-19 | 480 |
とくに大きく骨が伸びる時期である小中学生のカルシウム不足が顕著なのがわかります。カルシウム不足の傾向は、成人でも同様です。
原因としては、伝統的な和食にはカルシウムが豊富な乳製品の使用が少ないことや欧米に比べ土壌や飲料水にカルシウムの含有量が少ないことが考えられています。
カルシウムが多く摂れる食品はやっぱり牛乳?ただし吸収率は異なる
全世代でカルシウム不足の日本人。食事の中でカルシウムを含む食品を積極的に摂りたいところです。
カルシウムを多く含む食品には、牛乳・乳製品、大豆製品、魚介類、野菜・海藻類などがあります。
とくにカルシウムを多く含む食品は次のとおりです。
食品 | 一食分の目安 | カルシウム量 |
牛乳 | コップ1杯(200g) | 220mg |
ヨーグルト | 1パック(100g) | 120mg |
プロセスチーズ | 1切れ(25g) | 158mg |
豆腐 | 1/2丁(150g) | 129mg |
小松菜 | 1/4束(95g) | 162mg |
切り干し大根 | 煮物1食分(10g) | 50mg |
ひじき | 煮物1食分(10g) | 100mg |
サバの水煮缶 | 1個(80g) | 208mg |
ただし食品ごとにカルシウムの吸収率が異なります。平均的な吸収率は、牛乳で50%、ほうれん草や小松菜などの青菜で18%、小魚やえびなどの魚介類で30%程度です。
食品の中では、含有量・吸収率トップは牛乳ですが、それでも吸収率は50%です。
食品に含まれるカルシウム量を目安に献立を考える場合も、吸収率を考慮する必要がありそうです。
また、吸収率を高めるためにはビタミンD、ビタミンK、日光、適度な運動と睡眠なども必要です。効率的にカルシウムを摂取するポイントについては、次で詳しくご紹介します。
子どものためのカルシウム摂取方法とは?必要量を満たす3つのポイント
不足しがちなカルシウムを食事の中で摂取するには、どうしたらいいでしょうか。
ここでは日常生活の中で、カルシウムを効率的に摂取するためのポイントをご紹介します。それが次の5つです。
- ほかの食品と合わせて摂取する
- 適度な運動や十分な睡眠をこころがける
- 外で元気に太陽の光を浴びる
- 食生活が偏る場合はサプリメントもおすすめ
- 牛乳が苦手な子どもにはグラタンやコーンスープ
順に見ていきましょう。
①吸収率UP!ほかの食品と合わせて摂取する
カルシウムは主に小腸から吸収されます。
その際、吸収率を高めてくれるビタミンDや吸収されたカルシウムが骨に定着するのを助けるビタミンKと一緒に摂取するのがおすすめです。
ビタミンDが豊富な食品は小魚や桜エビなどの魚介類やキノコ類、ビタミンKが豊富なのは小松菜やほうれん草などの緑黄色野菜です。
桜エビを加えた野菜のかき揚げや小松菜の和え物、焼き魚にキノコの味噌汁などいかがでしょうか。
さらにビタミンKに加えタンパク質が豊富な納豆を添えてもいいかもしれません。
またカルシウムは、リンやマグネシウムと結合し、骨を形成します。
この3つのミネラルのバランスの理想の割合は、カルシウム1:リン1:マグネシウム:0.5です。
この3つのミネラルのバランスは重要で、過剰に摂取したとしてもカルシウムの吸収がよくなるわけではありません。
リンは、普通の食事をしていたら不足しないと考えられています。逆に摂取量が多いとカルシウムの吸収を阻害するので、摂り過ぎに注意しましょう。
ちなみにリンを多く含む食品は、インスタント食品や加工食品、マグネシウムを多く含む食品には、大豆・豆腐・海藻類などがあります。
参照:株式会社パル・オネスト|ミネラルの役割りについて リンとマグネシウム編
②適度な運動や睡眠をおこなう
骨は、縦方向の刺激(負荷)によって骨密度が高まります。
運動など骨に適度な負荷(圧力)がかかると、骨を作る細胞が活性化し、カルシウムが骨に沈着しやすくなるのです。反対に運動不足が続くと、骨からカルシウムが溶け出し骨が弱くなります。
また骨を作る活動を活性化させ身長を伸ばすには、「成長ホルモン」の分泌も必要です。
成長ホルモンは骨を成長させるよう働きかけてくれますが、睡眠中に分泌されるので良質な睡眠が不可欠です。
とくに入眠直後の深い睡眠時に分泌され、時間帯は夜の10時から2時ごろにピークを迎えます。適度な運動をして夜更かしをせず、ぐっすり眠るようにしましょう
参照:e-ヘルスネット|骨粗鬆症予防のための運動 -骨に刺激が加わる運動を
③外で元気に太陽の光を浴びる
カルシウムを骨に定着させる働きがあるビタミンDは、太陽の光(紫外線)にあたることで皮膚で合成されます。
紫外線の浴びすぎは禁物ですが、紫外線対策をしすぎたり家でゲームばかりしたりだと骨が弱くなってしまいます。
地球環境センターによると、ビタミンDを生成するために必要な紫外線を浴びるのに必要な時間は10分から13分程度です。
毎日15分程度で十分なので定期的に外遊びの時間をとり、太陽の光を浴びながら元気に過ごしましょう。
毎日の食生活が偏る場合はサプリメントもおすすめ
サプリメントでカルシウムを過剰に摂取した場合のリスクは前述しましたが、食事で十分なカルシウムが摂れない場合は別です。
とくに次のようなケースはサプリメントも検討してもいいかもしれません。
- 食が細く十分な栄養を摂れない
- 偏食で栄養が偏る
- 料理時間がなくバランスの良いメニューを用意できない
1日に必要なカルシウム量を大幅に超えることがないよう、サプリメントの説明書や含有量を確認して適切に利用しましょう。
牛乳が苦手な子どもにはグラタンやコーンスープ
牛乳を直接飲むのが苦手な子どもには、料理に使用して摂取させましょう。
例えば、次のようなメニューはいかがでしょうか。
- グラタン
- ホワイトシチュー
- ミルク煮
- クリームパスタ
- リゾット
- コーンスープ
- ポタージュスープ
牛乳の代わりに豆乳を使用している家庭もあるかもしれません。しかしカルシウム含有量の観点から見ると、豆乳の場合100mlあたりのカルシウム量は15㎎です。(牛乳は110㎎)
大豆製品はカルシウムを多く含む食品ですが、カルシウム摂取に重きを置く場合、豆乳は牛乳の代わりにはならないので注意しましょう。
おやつにヨーグルトやチーズを加えるのもあり
その他にも、おやつに乳製品を提供するのもおすすめです。ヨーグルトやチーズであれば、タンパク質も同時に摂れますよ。
また、手作りおやつでも牛乳をメインにした次のようなレシピもあります。
- 牛乳寒天
- ミルクプリン
- フレンチトースト
クックパッドやクラシルなどで無料のレシピが公開されているので、参考にしてみましょう。
まとめ
このページでは、子どもに1日に必要なカルシウム量や摂取に関する注意点について解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- カルシウムは成長期には欠かせない栄養素
- 神経や筋肉の働きにも関わりがある
- 過剰摂取には腎機能不全や結石のリスク
- 日本人はカルシウム不足
- 食品によって吸収率が違うので注意
- 吸収を上げるには食べ合わせが重要
- 睡眠・運動・日光が大切
- 摂取が難しい場合はサプリメントも可
カルシウムは、骨を丈夫にして背を伸ばすだけの栄養素ではありません。精神の安定や筋肉の動き、アレルギーなどにも関わっているとは驚きですね。
カルシウムを効率的に吸収するには、摂り方にもコツがあります。
この記事で紹介したポイントを参考に、カルシウムを積極的に摂っていきましょう。