カゼインが体に悪いといわれる理由とは?牛乳やプロテインの影響について

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現代は、何らかのアレルギーを持っている人も多いようです。そのなかで、「カゼインが体に悪い」と聞いたことがある人も少なくないはず。

「カゼインって何?」

「体に悪いって本当?」

「牛乳は飲んだほうが良いの?飲まないほうが良いの?」

牛乳の成分のひとつであるため、どことなく体によいイメージはありますが、果たして真相はどのようなものなのでしょうか。さまざまな論文を基に徹底調査してみました。

目次
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カゼインが体に悪いといわれる理由と真相について論文を基に徹底調査

まず、カゼインについて問題視されている部分に注目して深掘りしていきましょう。まとめると次のとおりです。

  • カゼインとは乳特有のタンパク質のこと
  • アレルギーのリスクがある
  • 中毒を起こすモルヒネに形状が似た物質ができる
  • 腸の粘膜が粗くなりリーキーガットにつながる危険性も
  • α型のカゼインが栄養素の吸収を阻害する(とくに鉄)
  • 【結論】ほとんどの悪評は「フードファディズム」の可能性がある

順に見ていきましょう。

そもそもカゼインとは乳特有のタンパク質のこと

カゼインは、牛乳に含まれる乳たんぱく質です。乳たんぱく質の約80%をカゼインが占め、残りの20%はホエイタンパク質と呼ばれるものが占めています。

画像引用:DNS ZONE|3-4.プロテインの種類 ホエイ・カゼイン・ソイ

またカゼインは、水に溶けないタンパク質で、大きく分けて次の3種類に分類されます。

  • α-Casein(アルファ カゼイン)
  • β-Casein(ベータ カゼイン)
  • κ-Casein(カッパー カゼイン)

水に溶けないタンパク質であるはずのガゼインですが、これら3種類のガゼインがカルシウムやナトリウムと結合して、粒子状で漂っています。

  カゼインが含まれている食品

ガゼインが含まれている食品の代表は牛乳です。そのほかヨーグルト・生クリーム・チーズ・練乳など、牛乳を原料とする食品に含まれています。

また水に溶けるカゼインナトリウムは、水と油を均一に混ぜ合わせる乳化剤の役割もあります。

そのほかに加工食品の栄養を強化するための「強化剤」や加工肉の脂肪を安定させる「安定剤」など添加物として使用される成分です。

そのためパン・アイスクリーム・ハム・ソーセージ・カマボコ・練り製品・乳製品・菓子などさまざまな食品にも含まれています。

ゆっくり確実に消化・分解されるのが特徴

カゼインは、胃に入ると胃酸によりヨーグルト状に固まります。そのため胃の中での滞留時間は長めです。

そのせいで「消化が悪い」と誤解されがちですが、実際には逆です。胃から分泌されるタンパク質分解酵素によって、ゆっくり確実に消化分解されていきます。

ホエイタンパク質との違いは…

ホエイタンパク質は、水に溶けやすく吸収も早いのが特徴です。

カゼインのように胃酸で固まることなく、ほかの食品とともに胃から出て、小腸ですばやく消化・吸収されます。

画像引用:ToharaBrothers|プロテインシリーズ②:ホエイとカゼイン

またカゼインよりも先に吸収されたホエイタンパク質は、体内でタンパク質の合成を促進します。あとから吸収されたカゼインは、タンパク質の材料となるアミノ酸となり、ゆっくりタンパク質の合成を助けます。

「牛乳のたんぱく質が、筋肉を作るのに適している」といわれるのは、このふたつの特性によるものです。

①アレルギーのリスクがある

近年、さまざまなアレルギーが存在しますが、牛乳は鶏卵に続いて第2位のアレルギー原因物質です。そのうえカゼインは乳アレルギーのおもな原因と言われています。

ただし食物が原因のアレルギーは、年齢とともに割合が低くなっています。6歳以降で食物が原因のアレルギーを持つ人は少なく、全年齢での日本の食物アレルギー有病率は1~2%くらいだと推定されています。

そのうちの20%が牛乳が原因のアレルギーと考えれば、0.2%(500人に1人)が該当する計算です。

なかでもα型のカゼインは遅延型アレルギーの原因になりやすい

カゼインは大きく分けて3種類あると上述しましたが、そのなかでもα-casein(アルファカゼイン‥αs1、αs2 )はカゼインの55%を占めています。ヒトやヤギの乳には含まれず、牛特有のたんぱく質です。

α型のカゼインは消化されにくく、未消化のまま腸に運ばれると、そこで炎症を起こしアレルギーの原因になるといわれています。消化されるまでに時間がかかることから、遅延型アレルギーの原因になりやすいのも特徴です。

お腹が張る、下痢をするなどの症状は病気ではない

日本人は牛乳の糖分(乳糖=ラクトース)を消化する酵素が少なく、3人に2人が乳糖不耐症といわれています。

小腸で吸収できなかった乳糖は、大腸に流れ酸やガスを発生させる原因にも。その結果、お腹が張ったり下痢をしたりなどの症状が現れます。

画像引用:ハウンドカム通信|牛乳の困りごと:お腹ゴロゴロ

しかしこれは病気ではありません。近年の研究で、大腸に善玉菌が多ければ乳糖は分解され、不快症状が出にくいことが明らかになっています。

温める、少しずつ飲むなど、飲み方を工夫すれば症状も出にくくなるようです。牛乳の代わりに乳糖の少ないヨーグルトやチーズを食べるのもおすすめです。

②中毒を起こすモルヒネに似た物質ができる

分解されたカゼインのアミノ酸配列がモルヒネに似ていることから、脳内で麻薬のように認識されるといわれています。そのせいで中毒性が高くなると恐れられています。

またカゼインに含まれるカソモルフィンというモルヒネ様物質が、牛乳を「また飲みたい」という気持ちにさせる反面、集中力低下などの原因になるといわれていますが、科学的な証明はされていません。

③腸の粘膜が粗くなりリーキーガットにつながる危険性も

カゼインは、消化吸収がゆっくりで、分解されにくいアミノ酸配列をしています。未消化のまま腸に入った場合、腸の粘膜を傷つけ炎症を起こすことも。

この炎症が繰り返し起こると、しだいに腸の粘膜が粗くなりリーキーガット症候群を起こす危険性があります。リーキーガット症候群とは、腸管を守っているバリアが破壊され、異物がすきまから体内へ侵入して炎症反応を引き起こす状態です。

④α型のカゼインが栄養素の吸収を阻害する(とくに鉄)

α型のガゼインは、胃酸によってヨーグルトのような粘着力の高いタンパク質になります。これが栄養の吸収を妨げるという説があります。とくに鉄分の吸収を阻害するといわれていますが、単に消化吸収がゆっくりになるだけで栄養素の吸収を阻害する科学的な根拠は見つかっていません。

また牛乳中の鉄含量はわずかなものなので、牛乳中の鉄分の吸収とは関係ないといえます。

【結論】ほとんどの悪評は「フードファディズム」の可能性がある

牛乳、とくにカゼインにまつわる悪評をご紹介しましたが、これらを見る限り牛乳やカゼインを摂取しないほうがよさそうだといった気分になりますよね。

ただし、この説には科学的根拠があまりなく「フードファディズム」の可能性もあります。「フードファディズム」とは、食べ物や栄養が健康と病気に与える影響を熱狂的に信じてしまうことです。

「〇〇を食べると痩せる」「〇〇で健康になる」といった情報を過剰に信じ、その食品ばかりを摂取するのも「フードファディズム」のひとつです。

もともと牛乳はアジア人が消化しにくい食品なので、過剰摂取には適していません。ただし栄養価が高い食品であるのは事実です。世界では数千年にわたって食されてきた実績もあります。

一方的にカゼインを敵視するのではなく、事実を知ることが重要です。

カゼインが体に悪いは嘘!?カゼインの機能性について

これまではカゼインの悪評についてご紹介してきました。以降は、カゼインのプラスの効果に焦点を当ててご紹介します。

次の4つのポイントにまとめました。

  • カゼインは体内のカルシウムを運ぶ
  • 免疫力を高める
  • 神経の興奮を鎮める
  • 筋肉の分解を抑制する

順に見ていきましょう。

カゼインは体内のカルシウムを運ぶ

カゼインはカルシウムと結合して粒子状(カゼインミセル)になって漂っています。この微粒子状の「カゼインミセル」は、牛乳1mL中に15兆個も浮遊しています。 

画像引用:Jミルク|乳たんぱくのすべて

この性質によって、カゼインがカルシウムを効率的に運搬し、ほかの食品に比べてカルシウムの吸収率を上げています。つまりカゼインミセルは、牛乳中のカルシウムのうち約3分の2を占めるカルシウムの運搬担当です。

CPPはカルシウムの吸収を阻害するどころか促進する

カゼインは消化分解されると、カゼインホスホペプチド(CPP)という物質を生成します。

画像引用:Jミルク|乳たんぱくのすべて

CPPは、牛乳やほかの食品に含まれるカルシウムなどのミネラルと結びつきやすい特性があります。この特性のおかげで、カゼインは小腸へカルシウムをくっつけたまま運び、その消化吸収を助けてくれるのです。

免疫力を高める

牛乳に含まれるラクトフェリンと呼ばれるたんぱく質や乳糖中の成分には、病気の感染を防いだり免疫力を高めたりする効果があることが知られています。

さらにカゼインが消化されて生じるカゼインホスホペプチド(CPP)には、免疫をつかさどるT細胞やB細胞を活性化する働きがあります。

またκ-カゼインにはアレルギー反応を起こすヒスタミンの放出を抑制する働きもあります。

参照:J-stage|牛乳たんぱく質に秘められた免疫系を介した多様な 生体防御機能に関する一考察

神経の興奮を鎮める

もともと就寝前に牛乳を摂取すると安眠効果があると民間療法的な観点からも知られていました。これは牛乳に含まれる必須アミノ酸トリプトファンに、微弱ながら誘眠作用があるからです。トリプトファンは、鎮痛や鎮静作用がある神経伝達物質セロトニンの原料となります。

それに加え、京都大学は「牛乳由来の新しい精神的ストレス緩和」についての研究で、カゼインに含まれるタンパク質が神経の興奮を鎮めるという研究結果を発表しています。

オピオイドペプチドと呼ばれるたんぱく質が、脳のオピオイド受容体に結合し効果を発揮。もともとオピオイドは手術やがん治療に使用する合成の麻薬物質でモルヒネ(アヘンから生成される麻薬性鎮痛薬)のような効果があります。

<モルヒネとは>

ケシから採取されたアヘンより生成されるアルカロイドの1種です。モルヒネは、麻薬の一種であり、強い依存性をもっています。そのため、法律でも、使用や所持、製造に対し厳しい規制が設けられています。

適切に処方や服用をした場合、依存は起こらず強い鎮痛効果を期待できます。医療では、疼痛をコントロールすることで、QOL(Quality Of Life)が向上したり、治療への意欲が増すことが期待され、がんによる疼痛など強い疼痛を緩和する目的で使用されています。 ただし、モルヒネの副作用として、便秘はほぼ100%、悪心嘔吐は40~50%の症例でみられると報告されています。

引用元:厚生労働省 e-ヘルスネット

参照:J-milk|牛乳由来の新しい精神的ストレス緩和 ペプチドの作用機構に関する研究 
参照:KAKEN|カゼイン由来オピオイドペプチドの構造と生理的意義

筋肉の分解を抑制する

筋肉の材料となるたんぱく質のなかでも、筋肉の保持や増量に重要な役割をはたすのが「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」です。

BCAAとは、必須アミノ酸であるバリン・ロイシン・イソロイシンの総称です。体内でつくることができないため食品から摂取する必要があります。

ホエイタンパク質に比べてBCAAの含有率は少ないものの、カゼインにもBCAAが豊富に含まれているのが注目すべき点です。

BCAAは、筋肉を構成する材料であるタンパク質を提供しつつ、同時に筋肉のエネルギーにもなり、運動時には筋タンパク質の分解を抑制してくれます。

カゼインは体に悪い?に関するQ&A

カゼインに関して、よくある質問をQ&A形式で回答します。

Q. カゼインフリーの食品ってなに?

Q. 豆乳は牛乳の代わりになる?

Q. カゼインNaが人体に及ぼす影響は?

Q. カゼインの副作用は?

気になる項目をチェックしておきましょう。

Q. カゼインフリーの食品ってなに?

「カゼインフリー」とは、カゼインアレルギーの人やカゼイン摂取を避けたい人のために作られた、カゼインを含まない食品のことです。その商品のパッケージには「カゼインフリー」と表示されています。

販売されている食品には、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、プロテイン、ケーキ、ホワイトソースなどがあります。

Q. 豆乳は牛乳の代わりになる?

タンパク質の点からみると、豆乳と牛乳ではそれほど差がありません。ただしカルシウムでは圧倒的に牛乳が勝っています。

一方でマグネシウムや鉄、イソフラボンは豆乳のほうが含有量が多く、それぞれの特徴によって摂取の目的も違ってきそうです。

結論としては、タンパク質という点では豆乳は牛乳の代用として可能ですが、カルシウムという観点からみると、代用できないといえます。

Q. カゼインNaが人体に及ぼす影響は?

カゼインNaは、カゼインにナトリウムを添加して作り出した食品添加物です。もともと水に溶けないカゼインは、ナトリウムで中和されると水になじむようになります。その性質を生かし、水分と油分を混ぜ合わせる「乳化剤」として使用されます。

乳化剤以外にも、加工食品の栄養強化を目的とした「強化剤」、加工肉の赤肉と脂肪の乳化状態を安定させるための「安定剤」としても使用されています。

カゼインNaは、添加物でありながら食品であることから、食品添加物とは区別されて表示されます。また自然に存在する牛乳由来の成分なので、摂取量の制限も決められていません。

添加物としてのカゼインNaを人体に影響があるくらい摂取するのは、物理的に不可能だと考えられます。添加物としては安全性が高いといえますが、乳アレルギーの人にとっては注意が必要でしょう。

Q. カゼインの副作用は?

カゼインの副作用は、乳アレルギーに加え、人によっては下痢もしくは便秘を起こす可能性があることです。胃酸によって凝集反応を起こしたカゼインは、胃に留まりなかなか消化されません。そのせいで便秘になる人がいるようです。また乳糖不耐症の方は、消化できずにガスが発生したり下痢したりします。

栄養豊富なカゼインですが、体調や体質によっては、アレルギー・便秘・下痢などの副作用に注意する必要がありそうです。

まとめ

このページでは、カゼインが体に悪いといわれる理由についてまとめました。

最後に重要な点をおさらいしておきましょう。

  • カゼインとは乳特有のタンパク質
  • アレルギーや中毒のリスクがある
  • 腸の粘膜が粗くなりリーキーガットにつながる危険性も
  • α型のカゼインが栄養素の吸収を阻害する
  • ほとんどの悪評は「フードファディズム」の可能性がある
  • 免疫力・神経鎮静などのプラス効果がある
  • 筋肉の分解を抑制する

カゼインはタンパク質が豊富で、カルシウムを効率よく吸収する補助的な役割もしてくれる栄養豊かな成分です。安眠や精神を落ち着かせる効果や添加物としての働きなど、栄養以外の働きにも注目すべき点が多々あります。

ただ、体質に合わない人が多いのも事実。カゼインが体質に合うかを慎重に確認したうえで、問題ない場合はタンパク質やカルシウムの栄養源として利用しましょう

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この記事を書いた人

子供を健康に育てたい全てのママに向けて、栄養や食育、幼児教育などの情報を発信する「mamahealth(ママヘルス)」編集部です。

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