アガーは、ゼリーを作るための凝固剤として使用されます。ゼラチンや寒天と比べ、透明度が高く光沢感があるのが特徴です。
「アガーって安全?」
「栄養効果はある?」
「お腹を下したりしない?」
この記事では、アガーの安全性や栄養効果、さらには副作用やデメリットなどを論文や研究をもとに深掘りします。
アガーを使うか検討されている方は、参考にしてください。
アガーは体に悪い?論文・研究をもとに副作用・飲み過ぎのデメリットを検証
アガーについて、論文や研究を次の4つのポイントにまとめました。
- アガーの主原材料は「カラギーナン」や「ローカストビーンガム」など
- カラギーナンの発がん性などの危険性について
- ローカストビーンガムは安全性が高い
- 通常摂取する限りではほぼ健康上の問題はなさそう
順に見ていきましょう。
アガーとは?主原材料は「カラギーナン」や「ローカストビーンガム」など
アガーは、カラギーナン(カラギナン)やローカストビーンガムを主原料としたゲル化剤です。ゼラチンや寒天と比べて、透明度が高いゼリーを作ることができます。
ゼリー以外にもプリン・グミなどの菓子に使われています。
カラギーナンやローカストビーンガムは、食品添加物の一種でゲル化剤・増粘剤・安定剤など広い用途に使用されます。食品以外にも医薬品・化粧品などにも使われているのが特徴です。
※カラギーナンは、紅藻類から抽出される多糖類、ローカストビーンガムは、乾燥した地域で栽培されるマメ科の多年生常緑樹カロブ樹の種子から抽出される多糖類です。
ゼラチンや寒天との違い
似た働きをするものにゼラチンと寒天があります。
それぞれ特徴を表で比較してみました。
アガー | ゼラチン | 寒天 | |
---|---|---|---|
原料 | 海藻や種子の多糖類 カラギーナン ローカストビーンガム | コラーゲン 牛の骨 動物の皮膚や骨 | 海藻 テングサ |
特徴 | 常温で固まる 90℃以上で溶解 30〜40℃で固まる | 冷やして固まる 40~50℃で溶解 5~10℃で固まる | 常温で固まる 90℃以上で溶解 40〜50℃で固まる |
見た目触感 | 透明感がある プルンとした食感 | 薄く黄みがかっている プルプルした食感 | 弾力が少ない 白濁している |
適している料理 | 透明度が高いゼリー | プリン ババロア マシュマロ ゼリー | 水ようかん 杏仁豆腐 ところてん |
注意事項 | ダマになりやすい酸味のあるものは固まらない | 生のパイナップルやキウイの酵素がゼラチンを分解してしまう | 果物や果汁など酸味のあるものを入れると凝固力が弱まる |
アガーは、宝石のような美しいゼリーを作るのに向いています。
ただしダマになりやすい、ダマになると溶けない、オレンジなど酸味のあるものは固まらないなど使い方にコツが必要です。
潰瘍とガン細胞が出現?カラギーナンは体に悪いかも…
アガーの原材料として注意したいのがカラギーナンです。2001年の論文によれば、マウスに大量のカラギーナンを摂取させたところ、大腸に潰瘍と癌細胞が出現しました。
ただし、この結果だけではカラギーナンに発がん性があるとはいえません。実験では、成分を分解したカラギーナンが使用されており、食品添加物に使用されているものとは構造が違います。
また豚を使った実験では、83日間にわたってカラギーナンを飲ませても、腫瘍や潰瘍は認められませんでした。その結果、カラギーナンの分解物は国際がん研究機関においてグループ2B(動物では発がん、人では不明)に分類されています。
今のところ、カラギーナンの発がん性はマウス特有の分解酵素によるもので、ほかの動物には関係ないようです。
参照:厚生労働省|食物繊維
参照:日本医薬品添加剤協会|カラギーナン
参照:NationalLibrary of Medicine|動物実験におけるカラギーナンの有害な胃腸への影響のレビュー
ただしヒトを対象にした研究では腸内の炎症が悪化した
カラギーナンは水溶性食物繊維に分類され、ヒトは消化できません。そのまま排出されるので問題ないとされていましたが、ヒトを対象にした研究で腸内の炎症が悪化したというデータも。
現時点では発がん性は認められないものの、腸内の酵素が弱ってしまう報告もあり、用心したいですね。
食品安全委員会では7,500 mg/kg 体重/日まで有害作用は検出されなかった
欧州食品安全委員会は、カラギーナンの再評価に関する意見書を参考に、カラギーナンの一日摂取量(ADI)75㎎/kg 体重/日はあくまで仮の数値とすべきと結論付けています。
これは、カラギーナンでおこなったラットの慢性毒性試験で、7,500 mg/kg 体重/日まで有害作用は検出されなかったものの、不確実性が残るためです。
参照:食品安全委員会|欧州食品安全機関(EFSA)、食品添加物カラギナン及び加工Eucheuma(キリンサイ属海藻)の再評価に関する科学的意見書を公表
ローカストビーンガムは安全性が高い
もうひとつの原材料であるローカストビーンガムは、イナゴマメの種子から抽出された多糖類です。
こちらは増粘剤や安定剤としてドレッシングやアイスクリームなどに広く使用されています。さらにカラギーナンやキサンタンガムなどほかの増粘剤と混ぜると相乗効果も。アガーの原材料も、ローカストビーンガム単体ではなくカラギーナンとミックスされたものがほとんどです。
食品以外にも化粧品や医薬品に採用されており、40年以上の使用実績があります。医薬部外品原料規格の基準を満たしており、医薬部外品原料規格2021にも収載されています。
皮膚刺激性や眼刺激性などにおいても「ほとんどなし」と評価されています。このことからローカストビーンガムは、通常の使用においては安全性に問題のない成分であると考えられます。
食品における個別事例ではアレルギーを発症した
個別事例のみですが、1992-2011年の間で4例のアレルギー発症事例が報告されています。
【ケース1】
ジャム工場で働く男性がローカストビーンガムとグァーガムに触れたあと鼻炎や目の炎症および喘息を訴えた。
【ケース2】
59歳の女性がデザートを食べた数分後に唇が腫れた。ローカストビーンガムの皮膚感作試験をおこなったところ陽性になった。
【ケース3】
アレルギー性鼻炎がある30歳男性は、ローカストビーンを処理すると定期的に喘息を発症。IgE抗体検査をおこなったところ陽性だった。
【ケース4】
生後8か月の幼児に増粘剤としてローカストビーンガムを使用したARミルクを与えたところ、じんましんと嘔吐を引き起こした。
症例としては少ないですが、アレルギー症状を起こす人がまったくいないわけではありません。
【結論】通常摂取する限りではほぼ健康上の問題はなさそう
アガーの原料であるカラギーナンとローカストビーンガム。炎症やアレルギーの心配がまったくないとはいえませんが、ほかの食品などと同様に、どのような食品でも体質に合わない人は存在します。
自然の食品を原材料にしている点、長年の使用実績がある点、ヒトでの発がん性が認められていない点などを考慮すると、とくに神経質になる必要はなさそうです。
アガーは体に悪い?食べる際の注意点
アガーはアレルギー症状の心配が多少ありますが、比較的安全性が高い食品だとわかりました。次にアガーを使用する際の注意点について解説します。
- 1日の許容摂取量には規定なし!気分が悪くなったら摂取をやめよう
- 酸味の強いものと混ぜると固まらなくなる
- ダマになりやすいのであらかじめ砂糖と混ぜるのがおすすめ
順に見ていきましょう。
1日の許容摂取量には規定なし!気分が悪くなったら摂取を辞めよう
原材料のカラギーナンやローカストビーンガムは、食品添加物ですが一日摂取許容量(ADI)は設定されていません。
第57回FAO/WHO合同食品添加物専門家会議では、カラギーナンの毒性リスクは事実上ゼロとみなされ、1日許容摂取量を「特定せず」と決定しました。
とはいうものの、体質に合わない人がいないわけではありません。もし気分が悪くなった場合は、すぐに摂取をやめましょう。
乳幼児や妊婦さんはあまり食べない方がいいかも
危険性はないとはいえ安全性も証明されていません。実際、カラギーナンを添加した医薬品や栄養剤は、妊婦や授乳中の女性が摂取することが禁じられています。
これはアレルギー症状やアナフィラキシーショックの可能性がゼロではないためです。腸に炎症が起こる可能性があることから、腸機能が未発達な乳幼児も避けたほうがよさそうです。
酸味の強いものと混ぜると固まらなくなる
アガーの大きな特徴として、酸味の強いものと混ぜると固まらなくなることがあります。
レモン汁やオレンジジュースなどを使用したゼリーを作る場合は、アガーを煮溶かし、最後に加えます。
加えるオレンジジュースも温めておくと分離しにくくなるので、失敗を減らせるでしょう。
ダマになりやすいのであらかじめ砂糖と混ぜるのがおすすめ
アガーはダマになりやすく、一度ダマになった状態から溶かすのは困難です。ダマにしないコツは、最初に砂糖と均等に混ぜておくことです。
砂糖を使用しない場合は、液体を攪拌しながら少しずつ加えてダマになるのを防ぎましょう。
また沸騰させると固まりにくくなるので、沸騰する一歩手前で止めます。常温で固まるので手早い作業が必要です。
アガーは体に悪い?に関するQ&A
アガーに関する、よくある質問にQ&A形式で回答していきます。
Q. アガーはどこで購入できる?
Q. 無添加のアガーはある?
Q. ダイエットに役立つ?
気になる項目をチェックしておきましょう。
Q. アガーはどこで購入できる?
アガーは、スーパーや製菓材料店などで手に入ります。楽天やAmazonでも販売しているので比較的簡単に購入できるでしょう。
ただしアガーと名前がついていても、寒天が配合されている場合も。使い勝手がよいように配合がアレンジされているケースだと考えられます。気になる方は、購入前に内容成分をチェックしましょう。
Q. 無添加のアガーはある?
ダマになりやすいデメリットを克服するために、最初からブドウ糖(砂糖)を加えてある商品が多いようです。また酸化防止剤としてリン酸二水素カリウムやリン酸一カリウムが添加されている場合も。
保存料が添加されていないのは、共立食品の「ゼリーの素(アガー)」や伊那食品(かんてんぱぱ)の「イナアガー」などです。
このふたつはスーパーでも販売しているので手に入りやすいです。少量パックを購入して早めに使い切りましょう。
Q. ダイエットに役立つ?
食事の代わりに水のみを材料としたゼリーを食べるのが「水ゼリーダイエット」です。ゼリーを作るために使用する凝固剤は、ゼラチン・寒天・アガーのどれでもよいとのこと。
しかし、ゼラチンはコラーゲンを摂取できますが、特有のにおいがして苦手だと感じる人も多いようです。
一方、寒天やアガーは食物繊維が多いので腸内環境を整えてくれ、ゼラチンよりもダイエットに向いています。
ただし食事をまるごと水ゼリーに置き換えると、栄養不足が気になるところ。どちらかというとおやつの代わりや食欲を抑えたいときに水ゼリーを食べ、摂取カロリーのコントロールに利用することをおすすめします。
味がないので飽きやすいとの口コミも。黒酢やきな粉で味付けするなどの工夫も紹介されていますが、ここで大切なのは黒蜜やはちみつなど糖分の高いものを利用しないことです。
また、アガー自体にもブドウ糖が含まれていることが多いので、ダイエット目的であれば、大量に食べるのも控えましょう。
まとめ
このページでは、アガーの安全性や食べるときの注意点について解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- アガーの主原材料は「カラギーナン」や「ローカストビーンガム」など
- げっ歯類(マウス)の実験ではカラギーナンが原因で潰瘍とガン細胞が出現
- ローカストビーンガムは安全性が高い
- 1日の許容摂取量には規定なし
- 気分が悪くなったら摂取をやめる
- 酸味の強いものと混ぜると固まらなくなる
- ダマになりやすいのであらかじめ砂糖と混ぜるのがおすすめ
- ダイエットに利用することも可能
アガーは、海藻や種子などの自然の食品からとれたものが主材料ですが、アレルギーや炎症の疑いがあるのも事実。ほとんどの人は心配ありませんが、異常を感じたら摂取をストップしましょう。
アガーを使うと美しい宝石のような透明感のあるゼリーを作ることができます。その特徴を知り、上手に利用しましょう。