家庭で使う砂糖を黒糖に変えたら、健康上のメリットがあるでしょうか。
「黒糖は砂糖に比べて体にいいの?悪いの?」
「食べ過ぎたらどうなる?」
この記事では、そんな疑問に答えるために、黒糖の食べ過ぎの危険性やデメリットについて解説します。
黒糖を試してみたいと考えている方は、参考にしてください。
黒糖は体に悪い?食べ過ぎの危険性・健康への影響についての気になる噂を徹底調査
砂糖とひと口にいっても、白砂糖や黒糖以外にも三温糖やてんさい糖などがあります。黒糖について理解するため、大切なポイントを5つにまとめました。
- そもそも黒糖ってなに?白砂糖との違いや原料
- メリットは白砂糖や三温糖に比べてカロリーが低いこと!ダイエットには△
- 【結論】健康への影響は「白砂糖」とほぼ同じと考えられる
- デメリット多数!砂糖の過剰摂取は老化を促進させる
- 1日の摂取目安量は25g!シュガースティック8本分
気になる項目をチェックしてみましょう。
そもそも黒糖ってなに?白砂糖との違いや原料
黒糖とは、沖縄県で主に生産されている含みつ糖の代表的なものです。含みつ糖は、原料から抽出した糖汁を単純に煮詰めて濃縮したものです。
それに対し、分みつ糖は工場で遠心分離機にかけ、砂糖の結晶と蜜を分けたのち、結晶だけを取り出したものを指します。どちらも原料はサトウキビで、違いは精製の度合いです。
【含みつ糖】
- 黒砂糖:サトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めて冷やし固める
- 赤糖:サトウキビの絞り汁から採れた原料糖と糖蜜をブレンド
- きび糖:サトウキビから糖分を取り出して結晶化させる
- 和三盆:サトウキビ糖液から分離した粗糖に少量の水を加えて手で練り上げる
【分みつ糖】
- 粗糖:原料の絞り汁から灰汁を除き不純物を沈殿させて上澄みを煮詰める
- 上白糖:遠心分離機で砂糖の結晶だけを取り出す
- 三温糖:上白糖を作った残りの液を取り出して煮詰める
- グラニュー糖:遠心分離機を用い、最高純度の糖液からつくる
参照:Kanro|砂糖の種類は大きく2つ! 含蜜糖と分蜜糖の違いを健康視点で考える
黒砂糖・黒糖・加工黒糖について
一般的に黒砂糖といっても2種類あります。それが黒糖と加工糖です。
特徴 | |
---|---|
黒糖 | サトウキビの搾汁を煮詰めて固めたもの |
加工糖 | 粗糖(白砂糖の原料)や糖みつなどほかの原料とサトウキビの搾汁を混ぜて黒糖風味をつけたもの |
黒糖はサトウキビのみを原料とし「純黒糖」と表示されることも多いようです。見分けるためには食品表示欄をチェックしましょう。
メリットは白砂糖や三温糖に比べてカロリーが低いこと!ダイエットには△
黒糖は、白砂糖や三温糖に比べてカロリーは低め。日本食品標準成分表2020年版(八訂)によると、各糖類のカロリーは次のとおりです。
種類 | カロリー/100g |
---|---|
黒砂糖 | 352 |
てんさい含蜜糖 | 357 |
和三盆糖 | 393 |
三温糖 | 390 |
上白糖 | 391 |
グラニュー糖 | 393 |
各糖類のなかではカロリーが低いようですが、「多少低い」程度です。ダイエットに利用したとしても高カロリー食品であることは変わりません。
ミネラルが多いといわれるが実際はあまり差がない
黒糖にはミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄)が豊富に含まれていると言われます。またビタミン(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6など)も同様です。
上白糖との違いを表にまとめてみました。
黒糖 | 上白糖 | |
---|---|---|
灰分(g) | 2.7 | 0 |
カルシウム(㎎) | 240 | 2 |
ナトリウム(㎎) | 240 | 2 |
リン(㎎) | 31 | 1 |
鉄(㎎) | 4.7 | 0.2 |
カリウム(㎎) | 1,100 | 2 |
マグネシウム | 1 | 31 |
亜鉛(ppm) | 2.21 | 0.5 |
銅(㎎) | 1.34 | 0.01 |
ビタミンB1(㎎) | 0.05 | 0 |
ビタミンB2(㎎) | 0.07 | 0 |
ナイアシン(㎎) | 0.8 | 0 |
上白糖に比べると、ミネラルが豊富に見えますが、あくまでも100gあたりの量です。砂糖は大さじ1杯で約9g。ミネラルの恩恵を受けるためには、大量に摂取する必要があります。
そう考えると、糖の過剰摂取のほうが気になるところ。黒糖は上白糖よりは栄養豊富であるものの、沢山食べたからといって健康になるとは限りません。
【結論】健康への影響は「白砂糖」とほぼ同じと考えられる
黒砂糖はミネラルが豊富な自然に近い食品ですが、その構成成分のほとんどはショ糖です。上白糖などほかの糖類がショ糖90%以上であるのに対して80~90%程度ですが、大きな差はありません。
健康への影響は、白砂糖とほぼ同じと考えていいでしょう。
どのような影響があるかは、次の項目で解説します。
デメリット多数!砂糖の過剰摂取は老化を促進させる
老化促進の原因のひとつとして注目されているのが「糖化」。食事などから摂った余分な糖質が体内のタンパク質などと結びつき、老化促進物質であるAGE(糖化最終生成)を発生させます。
AGEは細胞を劣化させ、肌のシミやくすみ、シミなど見た目の老化を促進するだけでなく、内臓や体組織に悪影響を及ぼします。
高タンパク低炭水化物食の女性よりも、加糖を含む炭水化物を多く摂取している女性のほうがシワが多かったという研究も。その研究チームは、糖質の摂取量が少ないほど肌の老化の見た目は良くなると結論付けています。
参照:Dietary nutrient intakes and skin-aging appearance among middle-aged American women
参照:オムロンヘルスケア|老化の原因「糖化」を防止しよう
ニキビ発症のリスクも高める
10代の若者2,300人を対象とした研究では、砂糖を頻繁に摂取する人はニキビを発症するリスクが30%高いと報告されています。
糖の代謝にはビタミンB群が必要ですが、不足すると糖質をエネルギー変換しにくくなります。
ビタミンBを含む黒砂糖は、白砂糖よりましかもしれませんが、含有量はごく微量です。過剰摂取は、ニキビ発症リスクを高めることを意識しておきましょう。
参照:Acne: prevalence and relationship with dietary habits in Eskisehir, Turkey
参照:森永|ビタミンB群の働き、多く含まれる食品を紹介
内臓脂肪量の増加にも砂糖が起因する
砂糖の摂取と内臓脂肪増加の関係性を明らかにした研究報告もあります。Framinghamの第3世代コホートの検査1・ 2で、平均年齢45歳の男女1003人を対象に、砂糖入り飲料またはダイエットソーダの摂取頻度を6年間追跡調査したところ、砂糖入り飲料を習慣的に摂取している人の内臓脂肪が増加していたことがわかりました。
肥満の原因は、砂糖を含む高カロリー食の過剰摂取に一番の原因がありますが、砂糖の過剰摂取も内臓脂肪量の増加に大きくかかわっているようです。
そのほか「心臓病」「ガン」「メンタル低下」のリスクを高める
心臓病と砂糖にも関連性があり、糖の摂取を減らすことで心血管疾患のリスクを大幅に減らせることがアメリカの研究でも報告されています。
また砂糖とガンに直接関連性があることは証明されていませんが、肥満は13種類のガンのリスクを高めることがわかっています。
さらに東京都医学総合研究所の発表によると、思春期に砂糖を摂りすぎると統合失調症などの精神疾患を発症するリスクのひとつになる可能性があるとのこと。
適量であれば、ストレス緩和の効果がある砂糖ですが、過剰摂取によりさまざまな病気のリスクが高まるようです。
参照:Added sugar intake and cardiovascular diseases mortality among US adults
参照:がん医療情報リファレンス|砂糖とがん
参照:朝日新聞|砂糖の取りすぎ、精神疾患のリスクに 脳の毛細血管に炎症 都医総研
1日の摂取目安量は25g!シュガースティック8本分
WHO(世界保健機構)は、1日の砂糖摂取量の目安を「1日に摂る総エネルギー量の5%未満に抑えるべき」とのガイドラインを2015年に発表しました。これは砂糖25gに相当し、スティックシュガーに換算すると8本分です。
WHOのガイドラインでは砂糖そのものではなく、「遊離糖類」の摂取量の目安を定めています。
「遊離糖類」とは、食べ物や飲み物に添加する糖類や蜂蜜、シロップ、果汁、濃縮果汁中に天然に存在する単糖類と二糖類のことで、砂糖の主成分であるショ糖も該当します。
そして注意すべきは糖分を含む飲料です。とくに次で示す各種ドリンクには糖分が多く含まれているため、注意が必要です。
- スポーツドリンク・500ml:33g
- 缶コーヒー:15g
- コーヒー牛乳:16g
- 野菜ジュース(100%濃縮還元果汁):25g
- 飲むヨーグルト:24g
- 栄養ドリンク:16g
参照:WHO|Guideline: sugars intake for adults and children
総摂取カロリーの10%未満なら過体重や肥満・虫歯のリスクを減らせるかも
もともとWHOの新ガイドラインでは、成人および児童の1日当たりの遊離糖類摂取量を総摂取カロリーの10%未満に減らすようにすすめています。その結果、過体重や肥満、虫歯のリスクが減るとわかっています。
ガイドラインでは「5%まで減らせば効果が増大する」としていますが、現実問題、毎日の糖類摂取量を正確に計るのは困難です。
したがって、甘い加工食品や飲料を控え、調理の際には砂糖の使用量に気を付けるなど心がけるとよいでしょう。
参照:食品安全委員会|世界保健機関(WHO)ガイドライン「成人及び児童の糖類摂取量」を発表
参照:WHO|Fiscal Policies for Diet and Prevention of Noncommunicable Diseases
黒糖は体に悪い?「甘い物が食べたい!」と感じたらこの3つを実践しよう
黒糖は、ほかの砂糖類と同じくショ糖で構成され、過剰摂取は肥満や生活習慣病の原因につながります。しかし甘いものが食べたいときもありますよね。
そこで「甘いものが食べたい!」と感じたときの対処法を3つご紹介します。
①グルタミンを飲む
②ベリー系のフルーツを食べる
③ステビアに置き換える
順に見ていきましょう。
①グルタミンを飲む
グルタミンには糖への欲求を和らげる効果があります。
健康な成人12名が通常の昼食を摂取したのち、グルタミンを添加したスープと添加しないスープを摂取した場合を比較すると、デザートの摂取カロリーに差があることがわかりました。
グルタミンの摂取は、満腹感をもたらし、食事の摂取カロリーを低減させる効果があるようです。グルタミン酸は、ほかにも次のような効果があります。
- 利尿作用
- 脳の活性化
- 脂肪の蓄積抑制
- 美肌
スポーツ用に粉末状で販売されているものが多く、1回当たり1000‐2000㎎を飲むとよいとされています。
②ベリー系のフルーツを食べる
果物に多く含まれる「果糖(フルクトース)が体重の減少に効果的」との報告がなされています。
その研究では、131人の肥満患者を対象にフルーツメインの食事を6週間続けた結果、より多くの果糖を摂取したグループのほうが体重が減少することがわかりました。
またフルーツの摂取量と体重の関係を調べたメタ解析(信頼性の高い高度な分析)では、果物を食べる量が多いほど体重が減り、肥満のリスクも下がる傾向が強くみられています。
大半の科学的データが、フルーツの摂取量と肥満には逆の相関関係があることを示しているようです。
しかし、ここで重要なのは「天然の」果糖フルクトースであること。
とくにベリー系のフルーツには、抗炎症・DNAのダメージ回復・認知能力向上などの効果もあります。詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
参照:The potential association between fruit intake and body weight – a review
参照:The effect of two energy-restricted diets, a low-fructose diet versus a moderate natural fructose diet, on weight loss and metabolic syndrome parameters: a randomized controlled trial
③ステビアに置き換える
ステビアは、キク科の植物で原産国のパラグアイではマテ茶に甘味をつけるために古くから用いられてきました。砂糖の300倍の甘さを持ち、植物由来の食品添加物のひとつとして厚生労働省に認められています。
血糖値を上げにくいので糖尿病の方でも安心して使用できますが、価格は白砂糖に比べて10倍ほど。(100g当たりの価格:白砂糖28円/ステビア280円)
ほかの人工甘味料を使用するよりは安全ですが、コスト面で使用を躊躇するかもしれませんね。
参照:価格コム
参照:ステビア甘味料の安全性
黒糖は体に悪い?に関するQ&A
黒糖ついて、よくある質問をまとめました。
Q.砂糖には依存性がある?
Q.砂糖を摂取すると食欲が増えるって本当?
Q.食べ続けるとどうなる?
Q.あまいものを食べると気分が良くなるのはなぜ?
気になる項目をチェックしてみましょう。
Q.砂糖には依存性がある?
「砂糖依存症」や「砂糖中毒」は確立された用語ではありませんが、一定の条件下で砂糖や甘味料の消費が依存症のようになるという科学的証拠があります。
砂糖に依存する仕組みは次のふたつです。
糖を含む食品を摂取すると血糖値が上昇します。そのためインスリンが分泌され、血糖値は再び下がりますが、急激に下がってしまうと今度は「低血糖」状態を引き起こします。
体内が「低血糖状態」になると、脳がエネルギー不足だと認識。再び糖を摂取して血糖値を上げるよう指令を出してしまうのです。このように糖を摂取したあとは、空腹でもないのに繰り返し糖を欲するようになってしまいます。
もうひとつが糖を摂取すると脳内でドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質の分泌されることです。これらは人に幸福感を与える麻薬のような性質を持っています。この快感がクセになり、再び快感を得るために、やたらと甘いものを食べたくなるのです。
砂糖は甘いお菓子以外にも、加工食品や総菜などにも使用されています。知らず知らずのうちに大量にとっている場合も考えられるので、注意が必要です。
参照:品川メンタルクリニック|甘いもの好きな人必見!砂糖依存症について
参照:Daily bingeing on sugar repeatedly releases dopamine in the accumbens shell
Q.砂糖を摂取すると食欲が増えるって本当?
上述の砂糖依存症でも解説しましたが、インスリンにより血糖値が急降下したとき、脳内ではエネルギー不足を感じています。
それにより「空腹」と脳が勘違いし、より多くの糖の摂取を促すよう指令が出ます。結果として「空腹ではないのに脳が欲する」せいで食欲が増すのです。
Q.食べ続けるとどうなる?
砂糖を食べ続けても1日の摂取エネルギーを適切にすれば太ることはありません。ただし砂糖は代謝過程で血糖値や血中の中性脂肪値を上げやすい食品なので注意が必要です。
それ以外にも砂糖の過剰摂取は、次のようなマイナスの影響をおよぼします。
- 片頭痛
- 空腹感が増す
- 消化不良
- 肌荒れ
- 老化促進
片頭痛は、血糖値が上がったのちに急降下がするときに起こりやすいようです。同じく血糖値が急降下するときに空腹感が増します。
さらに腸内菌にも影響をおよぼし消化不良になることも。またビタミンBが不足すると代謝に不具合が起き肌荒れの原因にもなります。さらに糖化により老化も促進されるので注意しましょう。
結論、砂糖は自然な食品なので食べ続けても大丈夫ですが、過剰摂取しないように気を付けることが重要です。
Q.あまいものを食べると気分が良くなるのはなぜ?
糖分は、脳内の心地よさを感じる部分を刺激して、「β‐エンドルフィン」というホルモンを分泌させます。
「β‐エンドルフィン」はストレスを和らげ、心身をリラックスさせる成分です。別名「脳内麻薬」とも呼ばれ、快感や幸福感をもたらす作用があります。
したがって、このホルモンによって、甘いものを食べると幸せな気持ちになれるわけです。
まとめ
このページでは、黒糖の栄養効果や危険性についてまとめました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- 黒糖はサトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めて冷やし固めたもの
- メリットは白砂糖や三温糖に比べてカロリーが低いこと
- 健康への影響は「白砂糖」とほぼ同じ
- 砂糖の過剰摂取は老化を促進させる
- 1日の摂取目安量は25g
黒糖は、サトウキビの搾り汁から作られた自然の食品です。ミネラルを含み体によい印象がありますが、ショ糖が80%を占めるので、栄養的にはエネルギー源としての役割しかありません。
黒糖に限らず糖分の過剰摂取は健康には悪影響だとさまざまな研究から明らかになっています。幸せな気持ちにさせてくれる甘いものですが、適切な距離を持ちつつ摂取していきたいですね。