カルシウムは骨や歯を構成する重要なミネラルです。ほかにも細胞の分裂・筋肉の収縮・神経興奮の抑制・血液凝固作用の促進などにも関与しています。
しかし、これだけ重要なミネラルにもかかわらず、日本人はカルシウム不足だといわれています。
この記事では、カルシウムの多い食品について解説。吸収率を上げるためのコツやカルシウムを多く含むレシピの紹介まで、カルシウムにまつわる情報をギュッと凝縮しました。
カルシウムの多い食品はこれ!カテゴリー別にご紹介
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によれば、カルシウムの推奨摂取量は成人男性750~800㎎/日・成人女性650㎎/日です。積極的にカルシウムを摂取できるよう、カルシウムを多く含む食品をカテゴリー別にご紹介していきましょう。
食品の種類別に理解するため、次の5つのカテゴリーにわけました。
- カルシウムが多い野菜
- カルシウムが多い大豆製品
- カルシウムが多い肉や魚
- カルシウムが多い果物
- カルシウムの多い乳製品と組み合わせよう
順に見ていきましょう。
カルシウムが多い野菜
文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を参考にカルシウムが多い野菜トップ10をご紹介します。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(mg) |
パセリ | 290 |
モロヘイヤ | 260 |
しそ | 230 |
水菜 | 210 |
小松菜 | 170 |
ルッコラ | 179 |
つるむらさき | 150 |
はくさい(山東菜) | 140 |
春菊 | 120 |
タアサイ | 120 |
モロヘイヤ・小松菜など香りが強く緑色が濃い野菜が多いのが特徴です。パセリ・しそ・ルッコラは、薬味に積極的に使用しましょう。また山東菜は、白菜の一種で煮物や漬物に適した野菜です。冬場が旬なので、浅漬けにして毎食少しずつ食べてはいかがでしょうか。
一方、夏が旬のモロヘイヤやつるむらさきは、刻むとオクラのような粘りが出るのが特徴です。スープに使用するとかさが減ってたくさん摂れるはずです。水菜は色が薄くても緑黄色野菜の一種で、カルシウムの量も第4位です。鍋やおひたしにしたり、生でサラダにしたりなど、さまざまな調理方法で沢山食べましょう。
カルシウムが多い大豆製品
忘れてはならないのが大豆製品に含まれるカルシウムです。とくに豆腐製品はカルシウムを多く含みます。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(mg) |
高野豆腐(乾燥) | 630 |
がんもどき | 270 |
生揚げ | 240 |
焼き豆腐 | 150 |
木綿豆腐 | 86 |
高野豆腐はかなりカルシウム量が多い食品です。ただし1枚分のカルシウムは95㎎。がんもどきや生揚げも1人前の分量は約半量(50g)が目安です。
また牛乳と同じくらいのタンパク質量を誇る豆乳ですが、カルシウム量は15㎎/100gと1/7程度となっています。
カルシウムが多い肉や魚
肉はタンパク質を豊富に含みますが、カルシウムはそれほど多く含みません。
ただし骨の成長にはタンパク質も大きく関わっているので、カルシウムと同時にタンパク質を摂れるのがメリットです。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(㎎) |
軟骨 | 47 |
豚もつ | 22 |
すっぽん | 18 |
豚足 | 12 |
焼き鳥 | 12 |
一方で魚はカルシウムが豊富な食材です。骨まで食べれば、かなりのカルシウムを摂取できるでしょう。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(mg) |
煮干し | 2200 |
どじょう | 1100 |
うるめいわし | 570 |
わかさぎ | 450 |
まいわし(丸干し) | 440 |
ししゃも | 330 |
あゆ | 250 |
さんま蒲焼缶 | 250 |
うなぎ蒲焼 | 150 |
煮干しのカルシウム量は驚くほど多く魅力的ですが、一度に100gを食べるのは難しそうです。その代わり食べる煮干しであれば、小15尾(4g)でカルシウムを約110㎎摂れます。おやつ代わりに食べるなどして、こまめにカルシウムを摂取しましょう。
参照:西埼玉中央病院|カルシウム/魚介類
参照:西埼玉中央病院|カルシウム/肉類
カルシウムが多い果物
果物は、ビタミンが豊富なことで注目される食品ですが、カルシウムも少量含みます。ランキングを見てみると柑橘類に含有量が多いようです。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(㎎) |
きんかん | 80 |
ハスカップ | 38 |
中国栗 | 30 |
いちじく | 26 |
キウイフルーツ(緑) | 26 |
アテモヤ | 26 |
オレンジ | 24 |
セノール | 24 |
日本栗(ゆで) | 23 |
さんぽうかん | 23 |
ハスカップは北海道特産の果実で、酸味を活かしてジャムやお菓子に使用。アテモヤは「森のアイスクリーム」とよばれる南国の高級フルーツとして注目を集めています。セノールやさんぽうかんは柑橘類です。続いてラズベリー、オレンジ、ゆず、パパイヤも約20㎎のカルシウムを含みます。
参照:果物ナビ|カルシウム
カルシウムの多い乳製品と組み合わせよう
体に取り込んだカルシウムは、そのまま体内に取り込まれるのではなく、一部が吸収され残りは排出されてしまいます。しかし乳製品は食品のなかで一番吸収率がよいのが特徴です。
その理由は、牛乳に含まれる乳糖やガゼインホスホペプチドの作用によるものといわれています。日本人は欧米人に比べて乳製品の摂取量が少ないので、料理に使用することで効率よくカルシウムを摂取しましょう。
食品名 | 100gあたりのカルシウム量(mg) |
スキムミルク | 1200 |
プロセスチーズ | 630 |
アイスクリーム | 140 |
ヨーグルト | 120 |
牛乳 | 110 |
チーズやスキムミルクなどは水分が取り除かれ、成分が凝縮されているおかげでカルシウムが豊富です。グラタンやシチューなど、料理に積極的に取り入れるといいですね。
日本人はカルシウム不足?摂取量目安と吸収率をあげる摂取のコツ
日本人に足りていない栄養素の代表がカルシウムともいわれています。
そこでカルシウムの吸収率を上げるためのコツや注意点を次の4つのポイントにまとめてご紹介します。
- カルシウムの1日推奨摂取目安
- カルシウムの吸収を妨げる原因を避けよう
- 吸収率アップのコツはビタミン
- カルシウム不足の症状とは
順に見ていきましょう。
カルシウムの1日推奨摂取目安
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、成人男性のカルシウム摂取推奨量は750~800㎎/日、成人女性は約650㎎です。
カルシウムは、体内に取り込まれたのち、小腸で吸収されます。体に占める割合は体重の1~2%。その99%は骨や歯に存在します。残りの約1%は血液や組織液、細胞に含まれています。
全世代でカルシウムが不足している
「令和元年国民健康・栄養調査」によるとカルシウムの摂取量平均は、推奨目安量を大きく下まわっているのが現状です。
各年代のカルシウム摂取平均量は次のとおりです。
年齢 | 男(mg) | 女(mg) |
20代 | 504 | 408 |
30代 | 462 | 406 |
40代 | 442 | 441 |
50代 | 471 | 472 |
60代 | 544 | 539 |
成人男性の推奨目標量750~800㎎/日に対して摂取平均量は440~540㎎、成人女性も推奨目標量650㎎に対して400~540㎎/日しか摂取できていません。
全世代で摂取量は目標値よりも下回っており、一番乖離している年代では推奨量の約6割に留まっています。
カルシウムの吸収を妨げる原因を避けよう
カルシウムの吸収率は、それほど高くないだけでなく吸収を阻害する要因も多々あります。例えば、塩分やリンは、カルシウムの吸収を阻害し尿中に排出してしまします。
ほかにもカルシウムの吸収を妨げる原因をまとめてみました。それが次のとおりです。
- ビタミンD不足
- ビタミンK不足
- リンの過剰摂取
- 食塩の過剰摂取
- 極端な食事制限(ダイエット)
- 運動不足
- 日照不足
- 喫煙
- 過度の飲酒
- 多量のコーヒー
カルシウムが足りないと、骨を構成しているカルシウムが分解され再利用されます。骨が痩せたり、もろくなったりするのを防ぐため、カルシウムの吸収率を妨げる要因は避けるようにしましょう。
吸収率アップのコツはビタミン
カルシウムの吸収には、ビタミンDとビタミンKの存在が重要です。ビタミンDはカルシウムの吸収を促進。ビタミンKはカルシウムが体外に排出するのを防ぎ骨への沈着を助けます。それに加え、クエン酸はキレート作用により食品中のカルシウムを溶かし吸収率を高めてくれます。
ただし吸収の効率を高めるためには、一度に多量摂取するのはおすすめしません。多量のカルシウムを摂取しても、吸収しきれなかったカルシウムは、体外に排出されてしまします。1日の中の何回かに分けて摂取するほうが、効率よく吸収できるでしょう。
ビタミンDを多く含む食品は、鮭・さんま・かれい・サバなどの魚介類ときくらげ・まいたけ・干ししいたけなどのキノコ類です。ビタミンKを多く含む食品は、納豆・ほうれん草・小松菜・干しひじきなどがあります。
食品によって吸収率が違う
カルシウムは吸収率が悪いといわれていますが、食品によっても吸収率に差があります。
牛乳・魚・野菜の各食品のカルシウム吸収率は次のとおりです。
野菜の吸収率は19%・小魚が33%とかなり効率が悪いですよね。一番吸収率が高いのが牛乳などの乳製品ですが、それでもたったの40%です。
カルシウム不足の症状とは
カルシウム不足はすぐには自覚されにくく、軽症のものであれば気付きにくいようです。軽症の症状の一例として、筋肉のこわばりや痙攣などがあります。
足がつる場合もカルシウム不足が疑われますが、「つりやすいな」と思うだけでカルシウム不足に気付くケースは少ないでしょう。重症になると全身痙攣や意識喪失、抑うつや不安などの精神症状などの症状もあるので軽視は禁物です。
ほかにもカルシウム不足には、次のような症状がみられます。
- 肩こり
- 虫歯
- 爪がもろい
- 足がつる
- 足腰や関節の痛み
- 血圧が高い
- 気持ちの浮き沈み
- 骨が弱くなる
- 細胞機能障害
- 細胞内情報伝達系の阻害から免疫異常
不足したカルシウムは、骨から漏出し再利用されます。その結果、骨がやせ細りもろくなってしまうことも。足がつりやすい場合は、カルシウム不足を疑ってみましょう。
閉経後の女性にカルシウムが大切な理由
女性ホルモンのひとつエストロゲンには、骨の新陳代謝をコントロールする作用があります。
しかし閉経するとエストロゲンの分泌量が大幅に減り、破骨細胞の働きを抑える力が弱くなってしまいます。そのため、閉経後の女性では特に骨がもろくなりやすいのです。
年齢が上がると、摂取カロリーは少なくて済むかもしれません。しかし厚生労働省が推奨する摂取目安は年齢が上がっても、カルシウムの推奨摂取量はそれほど下がっていません。
閉経を境に大きく減少していく骨を補うためには、今まで以上にカルシウムを意識して摂取する必要があります。
骨に負荷をかける運動で骨密度アップ
骨は縦方向に物理的な刺激が加わると、微量の電流が骨に伝わり強さが増すといわれています。
実際、運動経験の年数が長いほど骨密度が高いようすが次のグラフからもわかります。
運動により血流が上がり、骨を作る細胞も活性化。それと同時に骨溶解が抑制されるので骨密度が上がると考えられています。ウォーキングや縄跳びなど簡単な運動でも効果があるので、カルシウム摂取とともに骨に刺激を与える運動も意識してみましょう。
カルシウムの多いレシピ3選
カルシウムを効果的に摂取するために、カルシウム豊富なレシピを紹介します。
- 朝レシピ:チーズとシラスのトースト
- 昼レシピ:桜えびと小松菜チャーハン
- 夜レシピ:鮭のグラタン
順に見ていきましょう。
朝レシピ:チーズとシラスのトースト
1日の活力と推奨摂取量を満たすために朝食もカルシウムを意識したメニューにしましょう。
食パンに小魚とチーズを乗せてトーストするだけで合計246㎎のカルシウムが摂取できます。
ほかにも牛乳やヨーグルトを加えると、カルシウムだけでなくタンパク質もプラスできます。
昼レシピ:桜えびと小松菜チャーハン
カルシウムが豊富な小松菜と桜えびを使用したチャーハンです。
【作り方】
- 卵をご飯に混ぜておく
- 1㎝幅のざく切りにした小松菜、粗みじんにした長ネギをゴマ油でいためる
- ご飯を加えパラパラになるまで炒める
- 鶏ガラスープの素(顆粒)2g・塩1g・醤油3g・ゴマ3g・桜えび8gを加えて軽く炒める
一人前のカルシウム量は約186㎎です。
白ごまにもカルシウムが含まれているので、おひたしやあえ物などに積極的に利用しましょう。
成長期の子どもにはおやつに乳製品や小魚を
おやつといえば、甘いケーキやスナック菓子、アメやチョコレートなどが思い浮かびますが、成長期に骨を伸ばすために乳製品や小魚を積極的に摂りましょう。
例えば次のようなおやつはいかがでしょうか。
- カルシウムウエハース
- 骨せんべい
- しらすせんべい
- ナッツアーモンド
- ごまいりこ
- プロセスチーズ
- ヨーグルト
いつものおやつにプラスするだけで、カルシウムの補充に役立つはずです。
夜レシピ:鮭のグラタン
鮭と乳製品を使用したカルシウム豊富な1品です。
【作り方】
- 小鍋にバター大1を溶かし小麦粉大1・1/3を入れて焦がさないように炒める
- 牛乳を加えてよく混ぜ、煮立ったら火を弱めて塩を加える
- とろりとするまで煮込み、トマトピューレ大1を加える
- 生鮭に塩・こしょうをふる
- 玉ねぎは薄く切り、ブロッコリーは小房に切り、マッシュルームは薄く切る
- 耐熱皿に玉ねぎを敷き、生鮭を並べる
- 白ワイン小22をふり、ブロッコリー・マッシュルームをちらす
- ホワイトソースを全体にかけてチーズを乗せる
- 180度のオーブンで10 分焼く
1人前で225㎎のカルシウムが摂取できます。
オーブンがない場合はオーブントースターでも大丈夫です。缶詰の鯖缶などは骨まで食べられるので、市販品でアレンジするのもおすすめです。
カルシウムは夜に摂取すると効果的
骨を作るために必要な成長ホルモンは夜に多く分泌されます。そのため、カルシウムは寝る前や夕食時に摂取するのが効果的。
子どもは成長のため、大人は日中の活動で傷んだからだの修復(疲労回復)の時間となるため、しっかりカルシウムを摂っておきましょう。その際、吸収率を良くするためにビタミンDやクエン酸を一緒に摂るようにしましょう。
まとめ
この記事では、カルシウムの多い食品についてご紹介しました。
最後に重要な項目をまとめておきます。
- カルシウムが多い野菜はパセリやモロヘイヤ
- カルシウムが多い肉や魚は軟骨や煮干し
- カルシウムが多い果物はきんかんやハスカップ
- カルシウムの多い乳製品と組み合わせよう
- カルシウムの1日推奨摂取目安は男性750㎎・女性650㎎
- カルシウムの吸収を妨げる原因を避けよう
- 吸収率アップのコツはビタミンC・D・K
- カルシウム不足になると足がつったり抑うつ状態になったりする
どの世代でも摂取量が不足しているカルシウム。元気な老後を迎えるために、毎日コツコツ食べて丈夫な骨を維持していきたいですね。
おすすめのレシピを参考に、カルシウム量の多い食品を積極的に摂っていきましょう。