離乳食が完了して、大人と同じ食材を食べ始める幼児期ですが、生魚(刺身)に関しては迷いますよね。
「ハチミツのように避けるべき食材なの?」
「一緒に刺身や寿司を楽しみたいけど大丈夫かな?」
この記事では、何歳から生魚(刺身)を食べていいかについて詳しく解説します。手順や注意点についてもご紹介するので参考にしてください。
生魚(お刺身)は何歳から食べられる?
生魚(刺身)を食べ始めて良い年齢について調査してみました。わかったのは次の2点です。
- 一概には言えないが離乳食時期が過ぎた3歳が目安
- 口コミでも3歳から与え始める人が多いみたい
順に見ていきましょう。
一概には言えないが離乳食期が過ぎた3歳が目安
離乳食が完了するのは12ヶ月~18ヶ月ごろですが、離乳食の段階では生魚(刺身)を与えることはありません。
火を通した魚を次のような順番で試していくのが一般的です。
魚の種類 | 時期の目安 | |
---|---|---|
白身魚 | 鯛・カレイ・ヒラメ・鮭 | 生後6か月以降 |
赤身魚 | マグロ・カツオ・ブリ | 生後7・8ヶ月以降 |
青魚 | アジ・イワシ・サバ | 生後9~11か月以降 |
生魚(刺身)については、離乳食が完了したあと、2~3歳くらいから与え始めるケースが多いようです。
抵抗力や体力があるか、歯が生えそろって噛めるようになっているかなどを元に考えます。
それに加え、消化機能の発達度合いも考慮する必要があります。子どもの消化機能は離乳食が完了した後、次のような段階を踏んで発達していきます。
2歳 | 糖質の消化ができる酵素は大人の70%程度 |
3歳 | 脂肪とタンパク質の消化酵素が大人並みになる |
4歳 | 糖質の消化酵素が大人並みになる |
生魚を与え始めるのは、脂肪とタンパク質の消化が大人並みになる3歳以降が安心でしょう。
なおかつ体調が優れている時に与える
3歳になれば大人並みに消化酵素が整いますが、必ず体調が良い時に挑戦しましょう。とくにはじめてのものは、「少量から始めて様子を見る」を心がけます。
また奥歯が生えそろっていても、生魚(刺身)は子どもにとって噛み切りにくいものです。大人用に用意されているサイズだと大きすぎる可能性もあります。小さくカットするなど、食べやすいよう工夫しましょう。
口コミでも3歳以降が多数派
世間の保護者は、実際に生魚(刺身)を何歳くらいから与えているのでしょうか。
口コミを調査してみました。
育児本には生ものは食中毒などが心配される為3歳過ぎてからがよいでしょう。と確か読みましたが、お姉ちゃんたちがお寿司大好物で、パーティー好きな実家家族は何かと集まる機会には寿司が出て来たり、外食で回転寿司に行く事も多く息子には2歳頃から鉄火巻き、ネギトロ、生マグロなどは食べさせてしまっています。上のお姉ちゃんたちも3歳前から生ものを食べていたと思います。
口コミ参照:ベビカム相談室
3歳からという認識です。(たぶん何かの本で読んだ)上の子も3歳から食べ始めましたが、いくら・サーモンくらいです。2歳9か月の子はまだ積極的には食べさせてません。上の子のイクラを欲しがったら食べる程度です。やはり生ものなので怖いというのが正直なところ。刺身じゃなくてもゆでたり、焼いたりしたのでいいかなと思うからです。
口コミ参照:ベビカム相談室
私自身栄養士の資格を持っているのですが、やはり3才から少しずつ与え始めました。最初に与えたのは、マグロだったと思います。きちんと噛む事を前提にネギトロのように叩くのではなく、小さく切って与えました。
口コミ参照:ベビカム相談室
栄養士の資格があるママも3歳からとのこと。
消化機能も整った3歳児なら、ある程度安心して食べさせられそうですね。
生魚(刺身)を食べる際の注意点と与え方
生魚(刺身)を食べる際に注意すべきポイントを3つにまとめました。
- まずはイカやタコではなく、柔らかい魚から始める
- 塩分の過剰摂取に気をつけて!いくらであれば軍艦2巻までが目安
- 菌が気になる場合は表面を炙ったり軽く湯がいたりするのもおすすめ
順に見ていきましょう。
まずはイカやタコではなく、柔らかい魚から始める
最初は、イカやタコよりも柔らかい白身魚から始めるのがおすすめです。
離乳食のように鯛・カレイ・ヒラメ・鮭などを与えると良いでしょう。
イカやタコは小さい子どもには噛み切るのが難しく、誤嚥や窒息の危険性があります。
ちなみに内閣府の「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」では「誤嚥・窒息につながりやすい食べ物の形状や性質」として次のような食材を紹介しています。
弾力があるもの | こんにゃく、きのこ、練り製品 など |
なめらかなもの | 熟れた柿やメロン、豆類 など |
球形のもの | プチトマト、乾いた豆類 など |
粘着性が高いもの | 餅、白玉団子、ごはん など |
固いもの | かたまり肉、えび、いか など |
唾液を吸うもの | パン、ゆで卵、さつま芋 など |
口の中でばらばらに なりやすいもの | ブロッコリー、ひき肉 など |
イカやタコは大人でも噛み切るのが大変です。
幼児に与えるのは少しあとにした方が良さそうですね。
噛みにくい場合は小さく刻もう
刺身は切り身になっていても骨が残っている場合があります。それを避けるためにも、小さく刻んでみましょう。
参考になるのは介護食です。鯛やマグロなどを小さくカットし、骨も完全に取り除きます。
はじめての種類であれば、なめろうにするのもひとつの手です。
なめろうは魚のたたきの一種で、アジなどの魚に味噌・ねぎ・しょうがのみじん切りなどを混ぜ、粘りが出るまでたたいたものです。
アジの代わりにサンマやカツオ、イカなども人気があります。
ただし保存はきかないので、調理後は新鮮なうちに食べきりましょう。
塩分の過剰摂取に気をつけて!いくらであれば軍艦2巻までが目安
生魚(刺身)で気を付けたいのが塩分の摂りすぎです。意外に塩分が多いのが「いくら」です。
軍艦巻きを2貫食べると、約1gの塩分を摂取することになります。
「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」によると、1~2歳の子どもの塩分摂取1日目標量は3~3.5gです。いくらの軍艦巻き2貫で1日の摂取塩分目安の1/3を摂ってしまうので、食べすぎには気を付けたいですね。
エビ・カニなどの甲殻類はアレルギーの原因になるかも
エビやカニなどの甲殻類を食べるときに注意したいのがアレルギーです。
甲殻類は、急性症状を起こす「アナフィラキシー」の発症要因となることが小麦の次に多い食材だとされています。
甲殻類のアレルギーの原因となるのが「トロポミオシン」というタンパク質。エビやカニに含まれ、エビアレルギーの人は高確率でカニにもアレルギー反応を示します。
ただし甲殻類が原因となる食物アレルギーは、乳幼児期には多くありません。アレルギー3大原因食物(鶏卵・牛乳・小麦)が年齢とともに食べられるようになる2~3歳以降に、魚介アレルギーの発症が増え始めます。
幼児期は甲殻類や魚介類のアレルギーが少ないとはいえ、まずはアレルギーを起こしにくい鮭・マグロ・タラ・鯛などから始めた方が良さそうです。
参照:アナフィラキシーってなあに.jp|原因別アナフィラキシー
菌が気になる場合は表面を炙ったり軽く湯がいたりするのもおすすめ
生魚(刺身)で心配なのが食中毒です。とくに気を付けたいのがアニサキス。
アニサキスは寄生虫(線虫)の一種で、その幼虫がサバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、サケ、イカなどの魚介類に寄生します。
もともとアニサキスは内臓に寄生していますが、寄生している魚介類が死亡し時間が経過すると筋肉に移動します。
魚の筋肉(身)にアニサキスがいるのに気付かず食べてしまった場合は大変です。胃や腸の急性症状が起こり、激しい腹痛や嘔吐に襲われます。
アニサキスは目視でもわかるので、食べる前には目視でよくチェックしましょう。それ以外の予防方法は次のとおりです。
- 新鮮な魚を選ぶ
- 冷凍する (-20℃で24時間以上冷凍)
- 加熱する(70℃以上、または60℃なら1分)
70℃以上の加熱によって、ほとんどの菌や寄生虫は死滅します。心配な場合は軽くあぶったり湯に通したりしましょう。
もし心配なら小児科の開いている時間帯に与える
もし心配なら小児科の開いている時間帯に与え、異変が起きたらすぐに対応できるようにしておきます。
とくに次のような症状がみられた場合は、すぐに病院へ連れて行きましょう。
病院に行く際は、下痢便を容器に入れて持参すると同時に、疑いのある食べ物があれば保管するなど、原因を特定できるものがあると診断がスムーズです。
食中毒の場合、早く対処できれば、ほとんどの症状はすぐに治まります。できるだけ早めの受診を心がけましょう。
生魚は何歳から?関するQ&A
生魚(刺身)を幼児が食べることに関して、よくある質問を集めました。
Q.食中毒が起こりやすい魚は?
Q.生卵は何歳から食べられる?
Q.新鮮な魚の選び方は?
Q.自宅で可能な衛生対策は?
気になる項目をチェックしてみましょう。
Q.食中毒が起こりやすい魚は?
細菌や寄生虫による食中毒以外にも、食中毒が起きるケースがあります。それがヒスタミンによる食中毒です。
ヒスタミン中毒は、ヒスタミンが多量に蓄積された魚介類やその加工品を食べることで起こります。ヒスタミンは魚介類に付着した細菌によって生成されますが、熱に強いため焼いたり揚げたりしても効果がありません。
ヒスタミン中毒が起きやすいのは、白身魚よりも赤身魚です。とくにマグロ・カツオ・カジキ・ブリ・サバなどの大型の魚が多いようです。
食後数分から30分くらいで顔を中心に発疹や発熱の症状が出ますが重症化するケースは少なく、発症後6~10時間で回復する場合がほとんどです。今のところヒスタミン中毒による死亡例はありません。
免疫が関係している食物アレルギーとは違い一過性のものなので、アレルギー様食中毒と呼ばれています。
食中毒を起こさないため、次のような対策を取りましょう。
- 新鮮なうちに食べる
- エラや内臓を早めに取り除く
- 食べた際に唇や舌にしびれを感じたら食べるのをやめる
- 症状が出たら水分を十分摂り安静に
- 医療機関で抗ヒスタミン薬を投与してもらう
- 下痢や嘔吐などがあれば対処療法をおこなう
参照:消費者庁|ヒスタミン中毒
参照:厚生労働省|ヒスタミンによる食中毒について
Q.生卵は何歳から食べられる?
生卵で用心すべきは、アレルギーとサルモネラ菌による中毒です。
固ゆで卵の黄身は生後5~6ヶ月の離乳初期でも食べていいとなっていますが、生卵は2歳以下の乳幼児は避けましょう。厚生労働省もホームページで注意喚起しています。
そのほか老人・妊娠中の女性・免疫機能が低下している人も同様で、うずら卵を含む生卵は避けるよう提言しています。
またタンパク質の消化酵素が大人と同じくらいになるのが3歳です。このことから生卵は2歳以上、できれば3歳からが望ましいといえます。
参照:鳴門市|人間はどう発達していくか~発達に合った食のすすめ方
参照:厚生労働省:卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について
Q.新鮮な魚の選び方は?
新鮮な魚は目視で見分けることができます。1尾丸ごとの場合、鮮度を見分けるポイントは次の4つです。
- 目の色が澄んでいる (赤くない・血が混じっていない・白く濁っていない)
- えらの色が鮮やか(えらの色が鮮やかな赤色で白っぽくない)
- 体表の色つやが良い (鮮度が落ちると白く、つやがなくなる)
- 腹部に弾力性がある (切れて内臓が出ていない ・全体に張りがある)
切り身の場合は、水や血があまり出ていないこと、イカや鯛などの白身は透明感があるかどうかが鮮度をはかるポイントです。
参照:農林水産省|比治山大学出前授業pdf
参照:ニッスイ|すぐわかる!おいしいさかなの見分け方
Q.家庭でできる衛生対策は?
新鮮な魚を選ぶことはもちろんですが、そのあとの衛生管理にも気を配りましょう。
家庭でできる対策をいくつか紹介します。
- 調理するまでは冷蔵庫で保存する
- 調理する前に真水で洗い流す
- 調理器具をよく洗浄・消毒する
- 購入・調理後はすぐに食べる
さらに厚生労働省では「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」を紹介しています。参考にしつつ安全に生魚(刺身)を楽しみましょう。
参照:岐阜市|生魚の取扱い
まとめ
このページでは、幼児が生魚を食べる際の注意点についてまとめました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- 一概には言えないが離乳食時期が過ぎた3歳以降が目安
- 口コミでも3歳以降が多数派
- まずはイカやタコではなく、柔らかい魚から始める
- 塩分の過剰摂取に気をつけて!いくらの場合は軍艦2巻までが目安
- 菌が気になる場合は表面を炙ったり軽く湯がいたりするのもおすすめ
生魚(刺身)を食べるのは、3歳くらいからが安全だとわかりました。
寿司や刺身など豊かな食文化に幼児のうちから触れさせたい気持ちも分かりますが、食中毒の危険性や対策を理解したうえで、安全に楽しみましょう。