キシリトールは、「虫歯になりにくい」などポジティブなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
しかしキシリトールの悪影響については知らない人もいるかもしれません。
- キシリトールって安全?
- 子どもに与えても大丈夫?
- 身体や歯への影響が知りたい
この記事では、上記のような疑問を持つ方のために、キシリトールの危険性や身体への影響に焦点を当てて解説します。
基本的には安全なものですが、摂取量には注意が必要です。まずは研究結果などから、危険性・安全性について理解を深めていきましょう。
キシリトールは体に悪い?虫歯予防やその有効性とは
キシリトールは、虫歯予防を謳うガムのコマーシャルなどで有名になった印象がありますが、効果やその有効性は本当でしょうか。
ここでは、キシリトールに関する情報を次の4つにまとめました。
- キシリトールは虫歯予防効果が実証されている天然甘味料
- 1日平均67gのキシリトールを2年間食べ続けても悪影響はなかった
- 中耳炎や咽頭炎への予防効果も見られた
- 摂取する際に気をつけたいのはカロリー
順に見ていきましょう。
そもそもキシリトールとは虫歯予防効果が実証されている天然甘味料
キシリトールは、白樺や樫の木からとれるキシラン・ヘミセルロースという名の糖分から作られる糖アルコールです。
糖アルコールのなかでもキシリトールは、ミュータンス菌に分解されず酸を生産しないので、虫歯を予防する天然甘味料として北欧諸国で多用されてきました。
ミュータンス菌の増殖やプラーク(歯垢)の形成を部分的に抑えるだけでなく、カルシウムと結合して歯の修復(再石灰化)も促します。また口に入れると味覚を刺激し、唾液の分泌を促す効果もあります。
世界保健機構(WHO)や国連食糧農業機関(FAO)は虫歯予防の効果を認めており、日本では厚生労働省が食品添加物として認可している甘味料です。
いちごやラズベリー、レタス、ほうれんそうなどの野菜や果物にも含まれる
キシリトールはいちご・ラズベリーのほか、レタス・ほうれんそう・カリフラワーなどの野菜や果物に含まれています。
チューインガムなどに利用されているキシリトールは、白樺の幹やとうもろこしの芯を加工して作られています。
「虫歯の発生を防ぐ」効果が示されている甘味料はキシリトールだけ
キシリトールは長期的な臨床研究がおこなわれています。同じ糖アルコールであるソルビトールにも同様の効果があると認められていますが、プラーク(虫歯菌)中のミュータンス菌レベルがマイナスとなったのはキシリトールのみでした。
反対に同じ糖アルコールであるソルビトールでは、ミュータンス菌のレベルが上がり、虫歯の危険性がアップしています。
もしキシリトール入りのガムを虫歯予防の目的で使用するなら、キシリトールの配合率が50%以上、できれば70%以上のものを選ぶのが良さそうです。
安全性◎!1日平均67gのキシリトールを2年間食べ続けても悪影響はなかった
キシリトールは、日本の厚生労働省が食品添加物として使用を許可する前から、点滴剤の成分のひとつとして10年以上使用されてきました。
体内に直接入れても安全なキシリトールですが、アメリカの食品衛生安全局では、危険性がないことからキシリトールの1日の摂取制限値を設定していません。
ある研究報告によると、1日平均67gを2年間食べ続けても身体に影響がなかったとのとこと。虫歯予防のために必要なキシリトール量は1日10g程度なので、ガムを毎日噛んだとしても安全なようです。
またフィンランド・ユリビエスカ保健所の研究では、1日10gのキシリトールを2年間継続的に食べていると、食べるのを途中でやめても虫歯予防効果は、その後4年間続くと結論付けています。
ほかにもトゥルク大学の学生を対象に、すべての食事に使用する甘味料をキシリトールに置き換え、2年間にわたる調査をしたところ、新たに虫歯になる学生はいませんでした。一方でスクロースとフルクトースの場合は、どちらも虫歯が増加しています。
このことからキシリトールは長期間摂取しても安全、なおかつ虫歯予防に非常に効果的だとわかります。また、虫歯予防効果が本当に高い甘味料はキシリトールのみだとも証明されました。
JECFA「1日の許容摂取量を特定しない」という安全性の高いカテゴリーに分類
JECFAとは、国連の食糧農業機関(FAO)と世界保健機構(WHO)が設けた機関で、添加物の安全評価をおこなっています。主な構成メンバーは、各国の添加物に関する専門家や毒性学者などです。
そのJECFAでキシリトールは、「1日の許容摂取量を特定しない」という安全性の高いカテゴリーに分類されました。
※一日摂取許容量とは、人が毎日一生涯食べ 続けても健康に悪影響が でないと考えられる量のこと
ただし摂取する量によってはお腹が緩くなる(下痢)作用がある
キシリトール以外の糖アルコールも同様ですが、一度に多量に摂取するとお腹緩くなる作用があります。
糖アルコールは胃や腸で消化・吸収されにくく、大腸管内の浸透圧を上げます。それを是正しようと水分が集められ、大腸内が水でいっぱいになりお腹が緩くなるようです。
便秘の場合は有効かもしれませんが、毎日下痢が続くのは避けたいところです。
キシリトールをはじめ糖アルコールの摂取の際には、お腹が緩くならない程度の量を守ることが必要でしょう。
緩下作用を起こさない単位体重あたりの量
「ノンシュガーや低カロリーの菓子や飲料を食べたり飲んだりすると下痢をしてしまうのですが、何故でしょうか?」という質問に対して、東京都福祉保健局が緩下作用を起こさない単位体重当たりの目安量を掲載しています。
それが次のとおりです。
体重1㎏あたりのキシリトール摂取目安量
男 | 0.3g |
女 | 0.3g |
例えば体重15㎏の幼児であれば、1日4.5g程度におさえればお腹が緩くならない計算です。
各食品メーカーでは、摂取しても問題がない量を食品に使用しており、食品の外装に「体質によりお腹が緩くなることがあります」などと記載しています。
また、日本食品化学学会誌に発表された研究によると、下痢をした場合、もとに戻るまでの所要時間は約8~10時間程度でした。
もしキシリトールが原因でお腹が緩くなった場合も、時間を置けばもとの調子に戻るので、過度に心配する必要はなさそうです。
ほかにも中耳炎や咽頭炎への予防効果も見られた
子どもにとって急性中耳炎や咽頭炎は感染頻度が高い感染症です。治療は抗菌薬などが中心ですが、予防策のひとつとしてキシリトールの効果が注目されています。
「12歳までの小児における急性中耳炎の予防を目的としたキシリトール投与」という調査のなかで、キシリトールは咽頭細胞への肺炎連鎖球菌(肺炎球菌)およびインフルエンザ菌の付着を減少させることがわかりました。また急性中耳炎の発症リスクを25%低下させることも明らかになっています。
少人数の研究にもとづくデータなので限定的と注釈がつきますが、キシリトールに虫歯だけでなく中耳炎や咽頭炎を予防する効果がある点は注目すべきメリットです。
参照:12歳までの小児における急性中耳炎の予防を目的としたキシリトール投与
ラットの研究では免疫力を高める効果も示唆
キシリトールをラットに与えた研究では、好中球が活性化され生存率が高くなる結果が出ています。好中球とは、白血球全体の45‐75%を占め、最近や真菌感染から身体を守る免疫細胞です。
中耳炎や咽頭炎の予防になるうえ、免疫力を上げる効果があるキシリトール。虫歯予防のために習慣的に摂取していれば、同時にほかの病気も予防できる可能性が高そうです。
参照:がん情報サービス
摂取する際に気をつけたいのがカロリー
キシリトールのカロリーは11g/3kcalです。砂糖の1g/4kcalに比べて、少し低い程度です。例えばあるキシリトールガムのカロリーを見てみると10粒あたり30kcalあります。
一日に5‐10gのキシリトールを3‐4回に分けて摂取することが推奨されていますが、10粒でキシリトール量が5.3gであることから、毎日30‐60kcalはガムによってカロリー摂取することになります。
決して多くはありませんが、ゼロキロカロリーではないことを認識しておきましょう。
「キシリトール入り」はかならずしも虫歯予防になるとは限らない
キシリトールは虫歯の原因にならない甘味料ですが、キシリトール入りの食品がかならずしも虫歯予防に役立つとは限りません。理由はキシリトール入りの商品にはほかの甘味料が使用されている場合があるからです。
実際に同じ糖アルコールであるソルビトールが混合されている場合、虫歯の確率がわずかですが上がっています。
理想は、キシリトール100%のガムですが、少なくともキシリトールの配合率が70%以上であることが重要なようです。
虫歯予防のためにガムを購入する際には、かならずキシリトールの配合比率を確認しましょう。
購入するなら「トクホ」のマークが付いたものがおすすめ
キシリトール入りの商品を購入するとしたら「トクホ」もしくは「歯に信用マーク」のついた商品を選ぶようにしましょう。
「トクホ」は厚生労働省が効果を認めたものです。一方「歯に信用マーク」は、非営利団体日本トゥースフレンドリー協会がテストをおこない「食べてから30分以内に歯垢のpHを5.7より下に低下させないお菓子」と認めたものにつけられています。
歯はpH5.5以下になると溶け出しますが、協会ではさらに安全なpH5.7という値を設定しています。
虫歯の発生を予防するために厳正なテストをおこなっているので、購入する前にマークをチェックしてみましょう。
キシリトールに関するQ&A
キシリトールは安全で、虫歯予防や中耳炎・咽頭炎にも効果がある甘味料だとわかりました。ここでは、さらに理解を深めるため「よくある質問」をご紹介します。
Q. 糖尿病患者でも使える?
Q. キシリトールはなぜ虫歯を防ぐの?
Q. どんなガムなら食べてもいいの?
気になる項目をチェックしておきましょう。
Q. 糖尿病患者でも使える?
キシリトールは代謝にインスリンを必要としません。また吸収が遅く、血糖値の上昇が緩やかなので糖尿病患者でも比較的安心して食べられます。糖尿病患者の糖質補給剤としても有用とされています。
ただし1gにつき3kcalあるので、摂りすぎには注意しましょう。
Q. キシリトールはなぜ虫歯を防ぐの?
キシリトールが虫歯を防ぐ理由は、次のような特性があるからです。
- 酸を作らない
- プラークを改良する
- ミュータンス菌を抑制する
- 唾液の分泌を促進する
- 再石灰化を促進する
キシリトールは、ミュータンス菌のエサとして利用できないので、虫歯の原因となる酸を作らせません。また、プラーク(歯垢)中に存在するショ糖を分解する酵素の活性を低下させ、酸の中和を促進する働きもあります。
さらにキシリトールは、ミュータンス菌の活動自体を抑制させます。そして唾液の分泌を促進。唾液によって再石灰化が促進されるので、繰り返し摂取するうちに歯を強くしてくれるのです。
プラーク中のカルシウムレベルを上げ、さらなる再石灰化をうながす効果も認められています。
参照:日本フィンランド虫歯予防研究会|キシリトールの基礎知識
Q. どんなガムなら食べてもいいの?
虫歯予防として効果的なキシリトールですが、キシリトールガムを選ぶ場合は配合率に注目しましょう。
甘味料のうちキシリトールが少なくとも50%以上を占めているものが望ましいといわれています。
キシリトールの含有率が明記されていないときは、成分表をチェックしてみましょう。キシリトールの量を糖質の量で割ると、配合比率がわかります。
まとめ
この記事では、キシリトールの安全性や身体や歯への影響に焦点を当てて解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- キシリトールは虫歯予防効果が実証されている天然甘味料
- キシリトールは毎日食べ続けても悪影響なし
- 中耳炎や咽頭炎への予防効果も見られた
- キシリトールは糖尿病患者が食べても大丈夫
- 摂取する際に気をつけたいのはカロリー
- キシリトールの配合率が50%以上のものを選ぼう
- 「トクホ」や「歯の信頼マーク」はあればさらに安心
一度は「歯に良い」と聞いたことがあるキシリトール。深掘りしてみると、健康へのプラス効果も認められているとわかりました。
ただし商品を選ぶときには、配合率のチェックが欠かせません。「トクホ」や「歯の信頼マーク」を目印に適切な商品を選びましょう。