昔に比べてスーパーに陳列されているこめ油の数量が増えている印象はありませんか?実際のところこめ油の出荷量は年々増えています。
「こめ油って健康に良い?悪い?」
「農薬の心配は?」
「栄養的にはどうなの?」
この記事では、こめ油の危険性やデメリットについて深掘りします。栄養効果や安全性についても解説するので、参考にしてください。
こめ油は体に悪い?摂取の危険性・健康への影響について気になる噂を徹底調査
こめ油に関して、想定される危険性や健康への影響を、次の4つのポイントで解説します。
- そもそもこめ油とは、米ぬかと米胚芽から作られた食用油
- 悪い口コミの理由は溶剤抽出にノルマルヘキサンが使われているから
- 農薬が残留している可能性はあるかも
- 【結論】化学薬品や農薬以外の問題点は少なく比較的安全な油
順に見ていきましょう。
そもそもこめ油ってなに?原料は米ぬかと米胚芽
こめ油は、玄米を精米するときにできる「米ぬか」と「米胚芽」を原料に作られた食用油です。
全国の精米所から集められた米胚芽と米ぬかから油分を抽出し、食用に適さない成分(におい・ロウ分・ガム質など)を取り除きます。
玄米からたった1%しかとれない
米ぬかは、玄米の総重量のおよそ10%にあたります。そのうちの18%が油分ですが、精製を経て最後に製品として残るのは、最初の玄米の約1%程度です。
油を搾ったあとの「脱脂ぬか」にも栄養素が残っており、家畜の飼料などに有効利用されています。
抽出方法には「圧搾法」「溶剤抽出法」がある
植物油の製造方法には、「圧搾法」と「溶剤抽出法」があります。それぞれの特徴は次のとおりです。
- 圧搾法:原料に圧力と熱を加えて油を搾る
- 溶剤抽出法:有機溶剤を使用して油分を抽出
トウモロコシやべに花のように油分が多い原料の場合は「圧搾法」を用いることが多いようです。
圧搾法は抽出法と比較すると時間や効率が悪くなりますが、栄養価や風味が残りやすいのがメリットでしょう。
悪い口コミの理由は溶剤抽出にノルマルヘキサンが使われているから
一方、溶剤抽出法の場合、ノルマルヘキサンなどの有機溶剤を使用し、油分を抽出します。大量に効率よく油を取り出せるのがメリットです。
ノルマルヘキサンは、油を精製して得られる物質で無色透明。水とは混ざらず油を溶かす特性があり、塗料や接着剤などにも幅広く利用されています。
ただしノルマルヘキサンには比較的強い急性毒性があり、多発性神経炎、肝機能障害といった慢性毒性も指摘されているので、安全性に疑問を呈するサイトも散見されるのが現状です。
ただし、ほとんどは最終的に除去されている
使用された溶剤は最終的に食品に残らないよう除去が義務付けられています。
除去方法は、ノルマルヘキサンが80度まで熱せられると揮発するという特性を利用したものです。
脱臭の工程で油を200度に加熱し真空状態にすると油以外が揮発します。
複数回にわたって加熱処理をするため、その工程のなかでノルマルヘキサンは揮発し、最終的には残りません。
ノルマルヘキサンは食品添加物として厚生労働省に認められており、大豆油などにも溶剤として使用されています。
きわめて一般的な抽出方法ですが、問題点があるとしたら高温で油を熱する過程で一部の油がトランス脂肪酸に変異しやすいことです。
参照:環境省|化学物質の環境リスク初期評価(平成9~12年度)結果
農薬が残留している可能性はあるかも
こめ油に使用される米ぬかは、国内の精米所から回収されたものが多いですが一部輸入のものもあります。
稲作栽培には、除草剤や防虫剤などの農薬が多く使用されているといわれており、農薬の残留を懸念する声もあります。
しかし各メーカーのHPを調べたところ、在留農薬や重金属に関する検査をおこなっており、問題ないとコメントが見つかりました。心配な場合は、使用したいこめ油を製造しているメーカーのホームページをチェックするといいでしょう。
【結論】化学薬品や農薬以外の問題点は少なく比較的安全な油
ノルマルヘキサンなどの化学薬品を使用した使用した溶剤抽出法は一般的な製造方法です。さらに懸念の残留農薬についても、今のところ問題は見つかりませんでした。
原料も国産米を国内の精米所から回収した米ぬかの場合が多く、こめ油は比較的安全な食用油といえるでしょう。
こめ油が体に悪いは嘘!?摂取するメリットや栄養効果について
こめ油には、ほかの食用油と比較して、栄養面に優れている点もあります。それが次の5つです。
①抗酸化・悪玉コレステロール低下作用などがあるγオリザノールを多く含む
②油酔いしにくい
③血糖値の正常化に作用
④LDL-コレステロールを減少させる
⑤口臭を防ぐ
順に見ていきましょう。
①抗酸化・悪玉コレステロール低下作用などがあるγオリザノールを多く含む
米ぬかには機能性脂質やファイトケミカルが豊富に含まれています。機能性脂質には次のようなものがあります。
- γ‐オリザノール
- トコトリエノール
- トコフェロール
なかでもγオリザノールには、抗酸化作用があり、悪玉コレステロールを低下させる効果がある注目の成分です。
ほかにも自律神経の機能調整をすることから更年期障害や過敏性腸症候群の治療薬に利用されています。さらにコレステロール吸収や肝コレステロール生合成抑制作用があるので、高脂血症治療薬などにも応用される注目の成分です。
そのほか、ストレス軽減、腸内フローラの構成異常の軽減、インスリン分泌促進などの効果も期待できるでしょう。
このようなγ‐オリザノールが豊富に含まれているこめ油は、健康にもよいことがわかります。
参照:Some Strategies for Utilization of Rice Bran Functional Lipids and Phytochemicals
参照:NORICENOLIFE|玄米成分γオリザノールを活用する脳機能改善アプローチ
トコトリエノール(スーパービタミンE)は美肌・抗がん作用も
抗酸化ビタミンとして知られるビタミンE。ひとくちにビタミンEといっても、トコフェロールとトコトリエノールの2種類があり、それぞれα体・β体・γ体・δ体にわかれています。
そのなかでもα‐トコトリエノールには高い脂肪過酸化防止作用があり、コレステロール値の軽減、抗炎症作用による慢性疾患の軽減など、多くの健康的利点が発見されているようです。
また最近の研究では、抗腫瘍剤や抗ガン活性を有する天然化合物と組み合わせて投与すると相乗しあい、抗腫瘍効果を発揮することが指摘されています。
参照:Chemopreventive Properties of Dietary Rice Bran: Current Status and Future Prospects
参照:Anticancer properties of tocotrienols: A review of cellular mechanisms and molecular targets
オリザノールやトコトリエノールなどの成分は、調理後も残りやすい
ビタミンEは熱や酸にも強いので、精製や調理による加熱後も残りやすいのが特徴です。
次の図を見ると、ほかの食用油に比べて、こめ油のビタミンEの含有量が断トツに高いことがわかります。とくに健康効果が高いオリザノールやトコトリエノールは、こめ油特有の成分であり、油の酸化自体も抑えてくれます。
②油酔いしにくい
こめ油は、酸化しにくく揚げ物などの調理に向いています。
揚げ物などをすると部屋中に油のにおいが立ち込めて、ひどい場合には気分が悪くなることも。これは油から発生するアクロレインが原因です。
こめ油の場合、アクロレインの発生が比較的少なく、青臭いにおい(プロパナール)の発生量も少ないので油酔いしにくいという利点があります。
③血糖値の正常化に作用
高果糖食を与えられてインスリン抵抗性を誘発したラットにこめ油を添加すると、インスリン感受性が改善されたと報告されています。
インスリン抵抗性とは、膵臓からインスリンが血中に分泌されているにもかかわらずインスリンへの感受性が低下し、インスリンの血糖調節機能が損なわれることです。
このように米ぬかを原料としたこめ油のことをラットに与えるとインスリンへの感受性が改善し、結果的に血糖値の正常化に作用することがわかっています。
④血中総コレステロール値を減少させる
日清がおこなった調査では、健康な成人男性40名(総コレステロール値が200㎎/dl以上)が調合サラダ油とこめ油を連続して摂取したところ、血中総コレステロール値が下がったことがわかりました。
総コレステロール中に含まれる「LDLコレステロール」は、肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っていますが、増えすぎると動脈硬化の原因となり心筋梗塞や脳梗塞発症の危険性も。一般的に悪玉コレステロールとも呼ばれています。
※総コレステロールは:LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪に含まれるコレステロールの3つの数値から算出され、血液中に含まれるコレステロール量
もともと植物油に含まれる植物性ステロールは、コレステロール吸収量を減少させ、血中コレステロールを下げる機能があります。そのなかでも、こめ油の減少効果はほかの食用油よりも高いようです。
⑤口臭を防ぐ
インドの伝統医学・アーユルヴェーダの療法にオイルで口をすすぐ健康法があります。オイルプリングと呼ばれ、免疫力を高め口臭を防ぐ効果があるといわれています。
もともとココナッツオイルやゴマ油が利用されていましたが、その代替にこめ油も有効という調査結果が報告されました。
30名の妊婦にこめ油で14日間オイルプリングをおこなってもらった結果、口臭の程度が減少したそうです。これにはこめ油が持つ抗酸化作用が大きいことを示しています。
こめ油は体に悪い?に関するQ&A
こめ油に関する、よくある質問についてまとめてみました。
Q.保存期間はどのくらい?
Q.オリーブオイルとこめ油はどっちのほうが体にいい?
Q.こめ油にトランス脂肪酸は含まれている?
Q.家庭でこめ油を作ることはできる?
Q.ボーソーの米油は安全?
気になる項目をチェックしてみましょう。
Q.保存期間はどのくらい?
賞味期限の平均は製造から1年間です。開封後は空気に触れて酸化したり風味が変化したりするので、1~2ヶ月以内に使い切るといいでしょう。
また保存場所も重要で、温度変化や湿気の少ない冷暗所がおすすめです。
Q.オリーブオイルとこめ油はどっちのほうが体にいい?
オリーブオイルとこめ油の栄養成分を比較しやすいよう表にまとめました。
こめ油 | オリーブオイル | |
---|---|---|
エネルギー(kcal) | 880 | 894 |
炭水化物 | 3.9g | 1.1g |
α‐トコフェロール | 26㎎ | 7.4mg |
β‐トコフェロール | 1.5㎎ | 0.2㎎ |
γ‐トコフェロール | 3.4㎎ | 1.2㎎ |
δ−トコフェロール | 0.4㎎ | 0.1㎎ |
ビタミンK | 36μg | 42μg |
βカロテン | 0μg | 180μg |
オリーブオイルとこめ油のエネルギー量は、ほぼ一緒です。どちらも抗酸化作用があるビタミンEを含みますが、こめ油の含有量が多いのがわかります。
一方でこめ油にはまったく含まれないβカロテンをオリーブオイルは豊富に含みます。このことから、どちらも健康効果の高い食用油といえるでしょう。
ただし、植物性ステロールの含有量は、こめ油のほうが断然多いことがグラフからもわかります。
このことから、どちらもからだに良い食用油だといえますが、コレステロール値が気になる方には、こめ油のほうが適しているでしょう。
Q.こめ油にトランス脂肪酸は含まれている?
トランス脂肪酸とは、植物油を高温にして脱臭する工程で生まれやすい脂肪酸の一種です。植物油からマーガリンやショートニングを製造する際にできたり、自然界では牛などの反すう動物に由来する乳製品や加工肉に含まれていたりします。
過剰摂取すれば心筋梗塞や冠動脈疾患の危険性が高まると言われ、WHOも摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう提示しています。
当然、こめ油にも加工の過程でトランス脂肪酸が多少生じるようです。そこで各油脂に含まれるトランス脂肪酸を表で比較してみました。数値は平均値を拾っています。
食品名 | トランス脂肪酸量(g/100g) |
---|---|
こめ油 | 0.30 |
オリーブオイル | 0.10 |
サラダ油 | 1.39 |
マーガリン | 7.00 |
ラード | 1.36 |
バター | 1.95 |
参照:日清オイリオ|主な食用油のトランス脂肪酸の含有量は?
表でわかるように、こめ油にもトランス脂肪酸が含まれています。しかしその量は、ほかの油脂と比較するとはるかに少なく、心配するほどの量でないようです。
Q.家庭でこめ油を作ることはできる?
「米ぬかが手に入れば家庭でも作れるのでは?」と考えた方もいるかもしれませんが、実質のところは無理でしょう。上述でも解説しましたが、市販されているこめ油600gを手に入れるためには、米ぬか4.3㎏が必要です。
そこから次の図のように抽出・ろ過・脱臭などの工程を経て完成します。途中脱臭のために高温で熱する必要もあり、安全面から考えても、あまりおすすめしません。
もし安全でおいしいこめ油を手に入れたいのであれば、圧搾抽出法で製造した国産原料のこめ油をおすすめします。
Q.ボーソーの米油は安全?
ボーソー油脂株式会社は1947年に創業した米ぬか関連の製品を製造する企業です。こめ油以外にも脱脂米ぬかを利用した肥料や飼料の生産、ワックス・せっけん・化粧品などへの利用など、米ぬかに特化した製品づくりをおこなっています。
定期的に製品に含まれる放射性物質量を外部機関に依頼して計測し結果をホームページで発表していることから、安全面への意識も高そうです。製品づくり以外にも環境への取り組みを積極的におこなっており、歴史ある企業の製品として安全性は信頼できると思われます。
ただし製造方法は、圧搾ではなくn-ヘキサンを利用した抽出法です。
まとめ
このページでは、こめ油の栄養効果や危険性についてまとめました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- こめ油の原料は米ぬかと米胚芽
- 溶剤抽出にノルマルヘキサンが使われている
- 化学薬品や農薬以外の問題点は少なく比較的安全な油
- 抗酸化・悪玉コレステロール低下作用などがあるγオリザノールが豊富
- 油酔いしにくい
- 血糖値の正常化に作用
- LDL-コレステロールを減少させる
- 口臭を防ぐ
揚げ物に使用すればカラリと揚がり、油酔いもしにくいこめ油。その出荷量は、ここ数年増加しており、人気上昇中です。栄養面でも優れており、日常的に使用したい植物油の代表といえます。
コストは高くなりますが、より安全なこめ油を求めるのであれば、国産の原料でなおかつ圧搾法で製造したものを選ぶとよいかもしれません。