食品添加物は、食品を長持ちさせたり風味を良くしたりと非常に便利なものです。
加工食品には必ずというほど使用されているので、誰もが何らかの形で摂取しているはず。生涯のうちで口にする食品添加物は相当な量になるかもしれません。
「食品添加物を食べ過ぎたら癌になるの?」
「体調への影響は大丈夫?」
「アレルギーになったりしない?」
この記事では、食品添加物にまつわる危険性やリスクについて詳しく解説します。
食品添加物との正しい付き合い方もご紹介するので、参考にしてみてください。
食品添加物を取りすぎるとどうなる?危険性や身体への影響を解説
食品添加物を摂りすぎると、身体にはどのような影響があらわれるでしょうか。
その疑問について次の3つの観点から解説します。
- 「食品添加物=危険」は間違い
- 食品添加物の問題点は人での実験がされていないこと
- あくまでとりすぎは毒と考えよう!添加物は摂取量が物をいう
順に見ていきましょう。
「食品添加物=危険は間違い」基本的に安全性は確保されている
食品添加物は化学的なものだから体に良くないと思いがちですが、そうとは言い切れません。
食品添加物の使用を許可しているのは厚生労働省であり、認可にいたるまでに多くの実験とテストを繰り返しています。
人間と同じ哺乳類を使った動物実験などで、発がん性やアレルギー・妊娠への影響・子どもへの遺伝など詳しく調査。試験をクリアしたもののみ使用を許可しているので、基本的な安全性は確保されています。
使用量の目安はADIで設定されている
動物実験により無毒性が認められた量(NOAEL)に安全係数(1/100)をかけた量が1日摂取許容量(ADI)です。ADIは、「毎日」「一生涯」食べ続けても、健康に悪影響が出ないと考えられる量といわれています。
食品会社は食品添加物を使用する際、ADI値を超えないよう気を付ける必要があります。ただし実際に使用される量は、ADIよりもはるか少ない場合がほとんど。
実際に体内に入る食品添加物は、基準値よりもかなり少ないといえます。
食品添加物の問題点は人での実験がされていないこと
医薬品は動物実験のあと人間で臨床試験がおこなわれます。そこで有用性と安全性を確認しますが、食品添加物の場合は動物実験のみです。
食品添加物の動物実験では、ヒトと同じ哺乳類を採用していますが、寿命や食事内容などの違いがあるので目安にしかなりません。
また複数の添加物を同時に摂取した場合の影響は未知数である
食品添加物ひとつひとつの安全性や許容量は確認されています。しかしさまざまな添加物を同時に摂取した場合の影響については未知数です。
食品同士に食べ合わせの相性があるように、食品添加物でも相性の悪い組み合わせがないとはいえません。
動物実験であることに加えて、複数の添加物を同時に摂取した場合の影響については考えるべき点が多いものです。
食べ続けた場合の蓄積量にも注意したい
日本食品化学研究振興財団の調査によると、加工食品からの一日総摂取量は9420㎎(9.24g)、生鮮食品からの一日総摂取量は6680㎎(6.68g)でした。
加工食品から摂取する食品添加物の1日平均が約10gとすると、1年間に約3650g(約3.6㎏)も食品添加物を摂取している計算です。
それが一生(60年~80年)続くとしたら、相当量の食品添加物を体内に摂り入れていることになります。ADI(一日総摂取量)の基準をクリアしているとはいえ、蓄積される量にも気を付ける必要がありそうです。
あくまでとりすぎは毒と考えよう!添加物は摂取量が物をいう
どれだけ身体によい食品でも摂りすぎると毒になります。例えば、身体に良い大豆も一度に食べ過ぎると胃腸内で膨張し腹痛を起こす可能性があります。
食品添加物が食品の衛生を守るのに役立っているとはいえ、必ずしも身体によいわけではありません。摂りすぎは毒と考え、できるだけ摂取を控えるよう心がけましょう。
水ですら一度に10リットルを飲むと致死量です
「健康のために水を飲むとよい」と一度は聞いたことがあるかもしれません。しかし水も一度に10リットル飲めば致死量です。
摂取3リットル程度で水中毒を起こし、めまい・むくみ・頭痛・疲労感・下痢などの症状が現れ、重症になれば嘔吐や意識障害、呼吸困難、けいれんや錯乱といった症状が起こる可能性もあります。
また塩も同様に、体重1㎏あたり0.5-5gの塩を一気に摂取すると死にいたる恐れがあります。大切なことはどのような食品でも大量摂取をしないことです。
参照:からだにいいこと|水の飲み過ぎは1日何リットルから?症状と適切な量を解説
天然の食品添加物でも発がん性はある
食品添加物のなかには、天然由来のものと人工のものがあります。天然由来の添加物は、昔から使用されていた実績があり、ADI値を設定していないものもあります。
古くから使用されてきた既存添加物にアカネ色素が存在しますが、ラットを用いた試験で発がん性が認められた結果、既存添加物名簿から削除されました。ちなみにアカネ色素は、セイヨウアカネという植物の根からとれる天然の添加物です。
この例からわかるように、天然物は身体によくて合成添加物は体に悪いという一方的なイメージを持つのは避けたいところです。
遺伝子組み換えで問題になった論文は撤回されている
また、フランスのCaen大学の研究グループが発表した発表した「Long term toxicity of a Roundup herbicide and a Roundup-tolerant genetically modified maize(ラウンドアップ除草剤並びにラウンドアップ耐性遺伝子組み換えトウモロコシの長期毒性)」という論文が、根拠が不十分だと指摘され撤回されました。
これは、一度発表された研究結果も、のちに撤回されることがありうることを示しています。アカネ色素が名簿から削除されたことも含め、世の中にある定説も時代によって変化する可能性があります。
情報に振り回されるのは避け、消費者自身が賢くなり正しい情報を得る努力が必要でしょう。
参照:食品安全委員会|オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)、「セラリーニ論文への対応」と題する消費者向け情報を公表
食品添加物を取りすぎるとどうなる?よくある口コミを調査
正しい知識を得ることが重要ですが、口コミや噂に惑わされるのは避けたいところ。ここでは、食品添加物にまつわる口コミを調査しました。
- 日本は世界一の添加物大国?じつは…
- 日本でトランス脂肪酸の規制がないのは摂取量が少ないから
- 断食やサプリメントでのデトックスは逆に危ないかも
以上の3点について詳しく見ていきましょう。
日本は世界一の添加物大国?じつは…
一般的に日本は世界一の添加物大国といわれています。その理由は、日本で認可されている食品添加物の数が諸外国に比べて圧倒的に多いからですが、真実はそれほど単純ではありません。
厚生労働省が認可している食品添加物の数は約830品目、指定を必要としない天然香料や一般飲食物添加物を合わせると約1550種類となっています。
ヨーロッパや国連機関であるFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が合同で設立した国際食品規格委員会が設定する添加物は約400です。
こう見ると、日本の食品添加物の量が突出していますが、リストの基準が国によって違うので一概にはいい切れません。アメリカに関していえば、約1600種・香料など含めれば6000種にも膨れ上がります。
FAOとWHOが合同で設立した国際食品規格委員会(通称コーデックス)の添加物リストは392品目となっていますが、加工助剤や香料などは含まれていません。香料を含めると2800種類を超えるので、単純な数字だけ見て「日本は食品添加物大国だ」といえないと理解できます。
ほかの諸外国でも食品添加物の基準が異なる
ヨーロッパで認可されている食品添加物に関しては、イギリスが325種類、フランスとドイツはEUの基準で324種類です。この数字は、日本とアメリカに比べるとかなり少なく感じます。しかしコーデックス同様、香料などを合わせると日本やアメリカに近い数字になるのではないでしょうか。
また日本で添加物に指定されていない食品も添加物にカウントされていたり、日本でひとつの品目としてカウントされていたりするものが複数品目としてカウントされているなど、国によって基準がまちまちです。
結論として、数字だけで判断することなく消費者も食品の製造過程や原料、さらには添加物の内容などを深く知る必要があるといえます。
参照:農林水産省|EUの食品添加物データベース
参照:Approved additives and E numbers
日本でトランス脂肪酸の規制がないのは摂取量が少ないから
国によって規制される添加物が違う例はいくつかあります。海外では規制が進んでいるのに日本では規制されていない食品添加物の一例がトランス脂肪酸です。
トランス脂肪酸には、肉や乳製品に含まれる天然のものと植物油脂に水素添加した人工のものの2種類があります。水素添加することで、液体から半固体または固体へ変化させるのです。
それがマーガリン・ファットスプレッド・ショートニングです。トランス脂肪酸を使用したパン・ケーキ・ドーナツなどは軽くてサクッとしているので、とてもおいしく感じます。
ただしトランス脂肪酸を摂ると冠動脈疾患のリスクが高まるとして、WHO(世界保健機関)が注意を促しています。2023年までに加工食品から工業用トランス脂肪酸を排除するよう声明を公表するほど事態を重く見ています。
しかし日本においては、表示の義務すらありません。それは、WHOが定める目標値と比較し、日本人の平均摂取量が圧倒的に少ないという理由でした。
農林水産省が実施した調査によると日本人の平均摂取量は0.44~0.47%程度でした。厚生労働省の調査では0.3%といった結果で、心配する程度ではないという指摘は真実です。
忙しくて加工食品に頼りがちの30~50代の値を見てみても1%は超えていません。「摂りすぎていないから安全」ともいえませんが、過剰に恐れなくてもよいでしょう。
参照:農林水産省|トランス脂肪酸に関する調査研究
ただしトランス脂肪酸が危険なのには変わりない
トランス脂肪酸は、過剰摂取すれば心筋梗塞や冠動脈疾患につながるといわれています。また肥満やアレルギー疾患についても関連が認められており、安心はできません。
食事の欧米化が進む日本において、いつまでもトランス脂肪酸の摂取量が低いとはいい切れないでしょう。糖尿病・癌・胆石・脳卒中・認知症との関連はわかっていませんが、避けるべき食品添加物として意識してよいかもしれません。
断食やサプリメントでのデトックスは逆に危ないかも
身体に蓄積されていく食品添加物を排出するには、どうすればよいでしょうか。いわゆる「デトックス」は、体内から毒素や老廃物を取り除く健康法として認識されています。
しかし断食やサプリメントでのデトックスは、不用意に取り組むと危険な場合も。例えば最近よく耳にするファスティング(断食)も医学的な指導の下で安全に取り組むならメリットもあります。しかし排毒という観点では科学的根拠は示されていません。
点滴やサプリメントを使用して重金属を取り除く手法もあります。ただし鉛中毒など特別な状態に対しては有効な治療ですが、健康な人に対する効果は証明されていません。
また有害金属だけを取り除ければよいのですが、亜鉛など必要な微量元素も同時に取り除いてしまう危険性もあります。
そもそも人の体には解毒システムがある
そもそも人間の体には毒素を除去するシステムが備わっています。肝臓と腎臓は、血液から毒素を自然にろ過して排出してくれます。
また基本的なことですが、体内に入れる食品を選び、適度な運動と十分な睡眠を心がけること。これが身体の解毒システムを最大限に働かせるための秘訣でしょう。
食品添加物を取りすぎるとどうなる?正しい添加物との付き合い方
添加物をまったく体内に入れないのは難しいかもしれません。しかし、量を減らすことは可能でしょう。そこで、添加物との正しい付き合い方についてご紹介します。
- 専門家の意見は賛否両論ある!気にしすぎには要注意
- リスクなしの食品はないと考えよう
- 情報は取捨選択するのが大切
上記の3つの観点から詳しく見ていきましょう。
専門家の意見は賛否両論ある!気にしすぎには要注意
「食品添加物を食べれば癌になる」という強力な意見があるのは事実です。一方で、安全性は証明されているので必要以上に神経質になる必要はないという意見もあります。
幼い子どもがいる家庭では、食品に含まれる添加物が気になるのも当然ですよね。ただし気にしすぎて食事を楽しめないとしたら本末転倒。商品を購入するときには、食品表示をチェックしつつも、ある程度の許容範囲を設定しておくのも大切です。
頻繁に食べるものなら気にしていいかも
一方で、毎日口にする可能性がある食品に関しては、内容をしっかりチェックするのは大切かもしれません。
例えば味噌・醤油・塩・砂糖などの基本調味料。口にする機会が多いうえ、料理のベースとなります。酒やみりんなども同様で、原材料をチェックしてみると、内容に大きな違いがあることに気付きます。
ただし良質なものは価格も高いので、家計と相談して取捨選択する必要があるかもしれません。許せる範囲内で添加物の少ない良質な食品を選んではいかがでしょうか。
リスクなしの食品はないと考えよう
体に良いといわれる食品でも、同じものを大量に食べれば病気の原因になる可能性があります。身体との相性や食べ合わせ、食習慣など、様々な要因が作用しあうからです。
また、大量の加工食品に囲まれている現代において、添加物を一切摂らないというのも現実的ではありません。ある程度のリスクと共存していくぐらいに考えておきましょう。
情報は取捨選択するのが大切
さまざまな情報があふれるなか、正しい情報をキャッチすることは大変です。しかし、耳に入る全ての情報を鵜呑みにすることは避けたいところ。
専門家が発表した事実も覆ることもあるので非常に難しいところですが、できるだけ正しい情報を得るよう努力する姿勢は重要でしょう。
まとめ
このページでは、食品添加物を摂ることの危険性やリスクへの対応策について詳しく解説しました。
最後に重要な点をおさらいしておきましょう。
- 食品添加物の安全性は確保されている
- 食品添加物の問題点は人での実験がされていないこと
- 食品添加物は摂取量が重要
- 日本は世界一の添加物大国ではない
- 専門家の意見にも賛否両論ある
- リスクなしの食品はない
- 情報は取捨選択するのが大切
安全性が確保されており、食中毒などの危険を防ぐために有効な食品添加物。我々が食品添加物によるメリットを享受しているのも事実です。また、現代において食品添加物を完全に避けて生活するのは困難でしょう。
ただし、できるだけ体内に入れる食品添加物の量を減らしたいのであれば、正しく情報を解釈し、無理のない範囲で食品を選ぶことが大切です。