ナタデココは、ココナッツウォーターを発酵させた独特の歯ごたえがある食品です。1970年代にフィリピンで作られたのが始まりで、日本でも1970年代後半にはフルーツ缶詰などに入れて販売されています。
「ナタデココって食べても健康に影響ない?」
「原料は安全?」
「副作用や栄養効果ってある?」
この記事では、ナタデココの栄養効果や安全性、さらには食べ過ぎのデメリットなどを詳しく解説します。
ナタデココは体に悪い?論文・研究をもとに副作用・食べ過ぎのデメリットを検証
ナタデココに関する論文がなかったため、その主成分である食物繊維(セルロース)を次の4つのポイントから深掘りしていきます。
本記事の概要は以下の通りです。
- ナタデココは主成分が食物繊維の発酵食品
- 主成分の不溶性食物繊維(セルロース)はお腹の調子を整える
- 過剰摂取でお腹をこわす可能性がある
- 1日あたり18~64歳で男性21g、女性18g程度なら安全そう
順に見ていきましょう。
ナタデココは主成分が食物繊維の発酵食品
ナタデココは、ココナッツウォーターに酢酸菌の一種であるナタ菌と砂糖、酢などを加えて1~2週間発酵させたものです。
発酵が進むと表面にこんにゃくのような乳白色の膜ができます。ある程度の厚さになったものを取り出し、さいころ状に切ったのち加熱すると完成です。
ナタデココの成分ですが99%は水分。ビタミンやミネラルはほとんどなく、セルロースという不溶性の食物繊維を豊富に含みます。
ダイエットにもおすすめ?噛み応えがあるので満腹感を得やすい
ナタデココは、コリコリとした食感で非常に噛み応えがあります。咀嚼の回数も多く必要とし、食べたという満足感を得やすいでしょう。低カロリーで食物繊維が多いことから、ダイエットにも向いているかもしれません。
ただし注意点としては、糖質が多く含まれていることです。ナタデココ100gにつき糖質は19.7g。実際はナタデココ100g当たりの炭水化物は20.2gですが、食物繊維が0.5g含まれるので差し引いて19.7gとなっています。
つまりナタデココは、カロリーを抑えたい人にはよいのですが、糖質制限をしたい人には向かないというわけです。
また、ナタデココ自体には味がほとんどありません。一緒に黒蜜やシロップなどを摂取するとカロリーも高くなってしまうので注意が必要です。
参照:食品成分データベース
主成分の不溶性食物繊維(セルロース)はお腹の調子を整える
ナタデココに含まれるセルロースは、ナタ菌が作り出した不溶性食物繊維です。この食物繊維は水に溶けない不溶性食物繊維(セルロース)に分類されます。
バイオセルロースは植物性セルロースよりも強度が高いので、マスクなど衣料品にも利用されています。一般的な食物繊維と同じく、体内に入ると水を含み膨張。腸内で水分を吸収し便の量を増やしてくれ、その結果大腸を刺激して便通を良くしてくれます。
さらに大腸に残った古いカスや有害物質を吸着し一緒に排出してくれるので、大腸がんのリスクを軽減する可能性もあるといわれています。
腸内の善玉菌のえさにもなるので、お腹の調子を整える効果がありそうです。
食品安全委員会でもセルロースの食品添加は安全とされている
食品安全委員会はセルロースの食品添加は安全だと認めています。
この根拠として、JECFAが1989年に「ADI(一日摂取許容量)を特定しない」としたこと、2018年欧州食品安全機関(EFSA)が加工セルロースのADIを不要としたことなどが挙げられます。
※JECFAとは、添加物の安全性試験の結果を評価し、一日摂取許容量(ADI)を決定している機関です。
加工セルロースは、ほとんどが体内に吸収されず、毒性試験でも軟便などの軽度な影響のみであることから、きわめて毒性が低い物質だと評価されました。
参照:食品安全委員会|欧州食品安全機関(EFSA)、食品添加物としてのセルロース類10品目の再評価に関する科学的意見書を公表
特定保健用食品にもナタデココが使われることがある
ナタデココ入りの商品が、おなかの調子を整える機能性表示食品(トクホ)としても発売されています。
ナタデココ入りのトクホ商品といえば、伊藤園の「ナタデココ ヨーグルト味」です。カロリーは1本(280g)で134kcalなので、ダイエットには向かないかもしれません。
ナタデココ以外にも難消化デキストリンが配合され、食物繊維の効果で腸の調子を整えることを目的としています。
ただし過剰摂取でお腹をこわす可能性がある
一般的に食物繊維は便通がよくすると認識されていますが、まったく逆の結果となる場合もあるようです。
不溶性食物繊維は、便の量を増やし大腸を刺激して動きを活発化する働きがあると思われていますが、その効果がないケースも。
例えば、大腸の収縮が強くなり排便がしにくくなる「痙攣性便秘」の場合は、不溶性食物繊維の過剰摂取が原因で便秘が悪化する可能性があります。また食物繊維が多い食品を摂ると、ガスが溜まったりお腹が張ったりすることも。
2012年に発表されたあるレポートは、食物繊維が便秘を悪化することを明らかにしています。調査では、あえて摂取する食物繊維の量を減らすことで便秘が解消されたことがわかりました。
もともと便秘気味の人が大量の食物繊維を摂取すると、カサ増しされた便が腸内で渋滞を起こし、便秘が悪化するといった構図です。
レポートでは、この便秘タイプの方には乳酸菌を活性化するラクツロース(オリゴ糖の一種)のほうが効果があると結論づけています。
参照:Stopping or reducing dietary fiber intake reduces constipation and its associated symptoms
【結論】1日あたり18~64歳で男性21g、女性18g程度なら安全そう
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2020 年版) では、食物繊維の1日当たり摂取目標量を提示しています。
この表によれば、1日の食物繊維摂取目安は、成人男性で約21g/1日、成人女性で約18g/1日です。
摂取量の中央値が男性11~14g、女性10~13gなので、不足分をナタデココで補ってもよいかもしれませんね。
ただし小さい子どもに食べさせる際は気をつけて
ナタデココには、年齢制限はとくにありません。ただし、小さい子どもに食べさせる際には十分気を付ける必要があります。
その理由は、ナタデココをのどに詰まらせる可能性があるためです。
アメや餅、こんにゃくゼリーなどすぐに溶けにくい食品は、のどに詰まると呼吸を妨げ呼吸困難に陥る危険性も。
誤嚥に気を付け、食べさせるときはそばを離れない、小さくきざむなどの対応をしましょう。
アレルギー反応が出る場合もある
原料であるココナッツは、ナッツ類に分類されアレルギーの原因になる場合があります。
ココナッツアレルギーは、花粉症にともなう口腔アレルギー症候群の原因食物のひとつで、食べたあとに痒みや蕁麻疹などの症状が出る場合も。
ただしナッツ類のなかでは、ココナッツはアレルギー症状が軽く患者数も少ないといわれているうえ、食物アレルギー表示対象品目(28品目)には含まれていません。
しかしアレルギー反応の可能性はゼロではないので、食べたあとに痒みなどの異常を感じたら、摂取をすぐにストップするようにしましょう。
参照:消費者庁|加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック
参照:BML|免疫学的検査(ココナッツ)
ナタデココは体に悪い?に関するQ&A
ナタデココに関する、よくある質問にQ&A形式で回答していきます。
Q. ナタデココのおすすめの食べ方はある?
Q. 美容効果はある?
Q. 手作りもできるの?
気になる項目をチェックしておきましょう。
Q. ナタデココのおすすめの食べ方はある?
ナタデココ自体には、それほど味がないので、果物やヨーグルトなどと一緒に食べるのがおすすめです。
白玉と果物とあえてフルーツポンチにしたり、ゼリーのアクセントに使用するのもおすすめ。ほかにもソーダ割なんて食べ方も多いようです。
どちらかというとデザートとして食べるケースが多く、食事に使用する例は見つかりませんでした。
甘くておいしいデザートのアクセントとして使用されるナタデココ。つい食べすぎないように注意が必要かもしれませんね。
Q. 美容効果はある?
栄養面では99%が水、残りの1%が不溶性食物繊維であるナタデココ。ビタミンやミネラルをほとんど含みません。
ただし食物繊維には、便秘の改善やコレステロール値の改善、また血糖値の上昇を抑えるなどの効果があります。さらに独特の噛み応えにより、咀嚼回数が増え満腹感を得やすくなります。
ナタデココによる積極的な美容効果はないものの、水分補給や食物繊維による腸内環境の改善(ただし過敏症やもともと腸機能が低い人は除く)などを目的としたダイエット中のヘルシーな間食としては`おすすめです。
注意点としては、100g当たりのカロリーは80kcalと低めにもかかわらず糖質が19gあるので糖質制限には向かないことです。
参照:食品成分データベース
Q. 手作りもできるの?
ナタデココは、ココナッツウォーターにナタ菌を加えて作ります。
ただしフィリピンがナタ菌を国外に持ち出すことを禁止しているので、日本ではナタ菌が手に入りません。
そこで同じ酢酸菌であるKOMBCHA(コンブチャ)やカスピ海ヨーグルトなどを使って、ナタデココを作るレシピも紹介されています。
作り方は簡単で、砂糖を加えたココナッツウォーターにKOMBCHA(コンブチャ)を入れ、布きんやキッチンペーパーで蓋をした状態で静かな環境に置いておきます。
すると表面に膜が張り、徐々に厚みを増し不透明な白っぽい板状になります。それがナタデココです。1.5cm程度になれば取り出してお湯でゆでたのち、さいの目に切りましょう。
菌による発酵で作られるので、ある程度室温が高いほうがいいと思われます。厚みが1.5㎝くらいになるには10日~14日ほどかかるようです。
材料を手に入れることができれば、手作りに挑戦するのもおもしろいですね。
※KOMBCHA(コンブチャ)とは昆布茶とは違います。日本では紅茶キノコと呼ばれていおり自家製できる乳酸菌の発酵ドリンクを指します。種菌は通販などで購入でき、健康的な発酵ドリンクとしても人気です。
参照:ナタデココは自宅で作れるのか?必要となる原料や作り方の手順を紹介!
まとめ
このページでは、ナタデココの安全性や食べるときの注意点について解説しました。
最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- ナタデココは主成分が食物繊維の発酵食品
- 主成分の不溶性食物繊維(セルロース)はお腹の調子を整える
- 過剰摂取でお腹をこわす可能性がある
- 1日あたり18~64歳の男性で21g、女性で18g程度なら安全そう
- ナタデココのトクホ商品もある
- 美容効果のある成分は食物繊維くらい
- ナタデココは家庭でも作れる
ココナッツウォーターを原料とした発酵食品であるナタデココ。シンプルな成分で、ヘルシーな間食として利用するのによさそうです。
ただし糖質が高めなので食べすぎは厳禁!食物繊維不足を感じたときに適量食べる程度にしておきましょう。